2018 Fiscal Year Research-status Report
難治性リンパ管異常における薬物治療効果予測因子の確立
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18K15079
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堀 由美子 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (60528785)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 難治性リンパ管異常 / リンパ管奇形 / シロリムス / mTOR |
Outline of Annual Research Achievements |
リンパ管異常は、異常に拡張したリンパ管の集簇からなる疾患である。希少疾患であるもの、機能面および整容面における患者のQOLを著しく低下させるだけではなく、しばしば致死性となる。リンパ管の発達や脈管異常の病態にPI3kinase/Akt/mTOR経路が重要であることが解明され、この経路を標的としたmTOR阻害薬であるシロリムスの臨床治験が進んでいる。本研究では、mTORタンパクを手掛かりとして、リンパ管異常におけるシロリムス治療の効果予測因子を明らかとすることを目的としている。 本年度はまず、正常リンパ管および過去のリンパ管異常症例のホルマリン固定後のパラフィンブロック検体を用いて、免疫組織化学染色の可否を検討した。検討した抗体は、mTOR経路に関連したタンパクに対する抗体、6種類である。正常リンパ管やリンパ管奇形の一部、周囲間質などmTOR関連タンパクの陽性を示す例が認められた。これにより、ホルマリン固定後のパラフィンブロック検体について、mTOR関連タンパク抗体を用いた免疫組織化学染色が可能で、本解析にこの手法を用いることができることがわかった。 次に、mTOR阻害剤であるシロリムス投与症例の治療前後の検体に関しても同様の染色を行った。病変を構成するリンパ管の内皮、周囲の間質の一部にmTOR関連タンパク抗体の陽性像がみられた。平成30年度では、シロリムス治療の対象となる13症例を収集できた。今後、治療前後での形態学的あるいは免疫組織学的な、詳細な比較検討を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、①正常リンパ管および、過去に診断のついているリンパ管異常症例に対してmTOR関連タンパクの免疫組織化学染色の可否の検討(基礎データの収集)、②シロリムス投与対象のリンパ管異常症例に対する免疫組織化学染色(対象症例の検討)を行う予定であった。 ① 正常リンパ管および過去のリンパ管異常症例の、ホルマリン固定後のパラフィンブロック検体を用いて、免疫組織化学染色の可否を検討した。検討した抗体は、mTOR経路に関連したタンパクに対する抗体、6種類である。正常リンパ管やリンパ管奇形の一部、周囲間質などに、mTOR関連タンパクの陽性を示す例が認められた。これより、ホルマリン固定後のパラフィンブロック検体について、mTOR関連タンパク抗体を用いた免疫組織化学染色が可能で、本解析にこの手法を用いることができることがわかった。 ② mTOR阻害剤であるシロリムス投与症例の治療前後の検体に関しても同様の染色を行った。病変を構成するリンパ管の内皮、周囲の間質の一部にmTOR関連タンパク抗体の陽性像がみられた。初年度では、シロリムス治療の対象となる13症例(目標30症例)を収集できた。その内訳はリンパ管奇形が2例、Kaposiform lymphangiomatosisが3例、Kaposiform hemangioendotheliomaが2例、診断困難例6例であった。 シロリムス投与群における、mTOR関連タンパクの発現レベルの評価基準となる基礎データの集積は終了している。シロリムス投与症例については、最終年度も引き続き、症例を集積しながら解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、①リンパ管異常症例のシロリムス投与前後での組織学的変化の解析、②組織学的変化とシロリムス治療効果との比較検討を行う予定としている。
① 前年度に引き続き、シロリムス治療前後の症例における免疫組織化学染色を行い、mTOR関連タンパクの発現を調べる。 ② 疾患ごとのmTOR関連タンパクの分布・発現レベルを明確にするパネルを作成する。作製されたパネルをもとに、患者の臨床的背景および臨床的治療効果との比較検討を行い、病理組織を用いたシロリムスの治療効果予測因子を明らかとする。
収集したシロリムス症例検体の中には、解析が困難なものも含まれており、予定の目標症例数に達しない可能性がある。解析困難例が存在する理由としては、病変の特性上、検体が解析に適さないほど断片化している症例や、病変がうまく採取できていない症例があること、骨組織の混在により標本作製時に免疫染色に適さない脱灰操作が加わっている症例があることなどが挙げられる。疾患を細分化するとそれぞれの症例数は少なく、また、シロリムスの著効症例では、投与後の検体を入手できない場合も多い。治療前後ともに、さらなる検体の集積を協力施設に呼びかける予定である。最終的に症例数が目標に達しない場合でも、解析可能であった症例の結果をまとめ、シロリムス投与による病理学的な治療予後の予測因子を検討していく予定である。また、シロリムス投与前の検体のみで、mTOR関連タンパクおよびリンパ管内皮マーカー、血管内皮マーカーの染色性を、疾患ごとに比較してまとめることも検討している。
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