2018 Fiscal Year Research-status Report
肺血栓塞栓症の発症病態における静脈血栓由来DAMPsの関与
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18K15083
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
魏 峻洸 宮崎大学, 医学部, 助教 (30794656)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | venous thrombus |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症の病態において、静脈血栓由来因子の病態への関与と、肺の非塞栓部領域における病理学的変化の解析と病態への関与を明らかにすることを目的としている。 今年度は急性期静脈血栓の代謝産物を解析し、それらの静脈血栓形成関与について検討を行った。家兎静脈血栓を誘導、採取し、メタボローム解析を行った。本研究の結果、新鮮静脈血栓では、解糖系、酸化還元、プリンヌクレオチド、トリプトファンに関連する代謝産物が大きく変動しており、特に乳酸とプリン代謝産物は顕著な濃度増加がみられた。In-vitroの検討では、乳酸ならびにグアニンは凝固時間を軽度短縮し、乳酸ならびにAMPはコラーゲンによる血小板凝集を阻害することが明らかとなった。ヒトの吸引血栓を用いた検討では、ヒト静脈血栓はGlut-1を発現した赤血球に富む新鮮血栓であり、赤血球成分比率とGlut-1の発現率は、深部静脈発症時間と負の相関を呈することが明らかとなった。以上の検討から、解糖系、プリン系、酸化還元関連代謝産物が赤血球に富む新鮮血栓を反映し、これらの代謝産物が静脈血栓形成と関連していることが示唆された。また、乳酸濃度の増加は、解糖が活発な赤血球に富む新鮮血栓を反映し、急性期静脈血栓マーカーになり得ることが示唆された。本研究については、論文発表を行った。 本研究成果については、静脈血栓における代謝産物についてメタボローム解析を用いて明らかにしており、静脈血栓形成への関与のみならず、今後は肺血栓塞栓症における病態関与の解明につながる可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
●動物モデルを用いた病態解析 前述の通り、静脈血栓のメタボローム解析を中心とした解析を行い、研究を論文発表した。また、家兎静脈血栓ならびに肺血栓塞栓モデルは確立済みであり、予定作成数ならびに組織サンプリングは終了している。現在、採取した血栓組織ならびに肺組織について、発現遺伝子をPCR arrayを用いて網羅的解析を継続している。 ●人体病理学的研究 ヒト剖検例より深部静脈血栓症ならびに肺血栓塞栓症を有する症例の抽出は終了しており、現在肺動脈の形態変化について解析を継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
●動物モデルを用いた病態解析 家兎血栓組織ならびに肺組織の発現遺伝子の解析静脈血栓モデルの肺組織を用いて、PCRアレイで内皮細胞関連因子(炎症反応、接着分子、血栓性因子、血管収縮因子など)の変動を網羅的に解析する。また、DAMPsを含む静脈血栓由来因子について、elisaを用いて血栓中ならびに静脈血中の濃度測定を行う。 ●培養細胞を用いた病態解析 培養肺動脈内皮細胞にDAMPsを上記測定結果の血中濃度に合わせて添加し、接着分子、抗血栓性因子、壊死・アポトーシス細胞数を検討する。 ●人体病理学的研究 肺血栓塞栓症の剖検例(申請時15例)の肺病理標本を用いて、非塞栓部肺動脈の病理学的変化について、弾性動脈・筋性動脈・細動脈に分けて「内皮剥離・璧在血栓・炎症細胞浸潤とその種類・内膜平滑筋細胞・外膜変化の有無」の項目について検討する。
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Research Products
(1 results)