2018 Fiscal Year Research-status Report
Image analysis-based subtyping of immunosuppressive tumor-immune microenvironment in pancreatic cancer tissue
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18K15094
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
眞杉 洋平 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (90528598)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 膵癌 / 免疫 / 腫瘍微小環境 / 画像解析 / 人体病理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
難治がんの代表である膵癌に対する治療が模索される中、腫瘍間質の修飾により免疫治療効果が顕著に増強されることが明らかとなりつつある。本研究は、膵癌に対する免疫間質療法の実用化・個別化への展開の基盤となる成果を創出する。具体的には、患者組織の精緻な定量解析を用いて、ヒト膵癌においてT細胞性免疫の抑制に中心的役割を果たす間質因子・細胞の同定(目的1)、免疫抑制性微小環境に基づく膵癌サブクラス分類の提唱(目的2)を達成する。 これまでの研究により、次の3項目(①~③)について国内外の学会で発表し、原著論文を投稿した(in revision)。 ①安定した蛍光多重免疫染色プロトコールの開発:チラミドシグナル増幅技術を応用し、スライドスキャナーで感知可能なレベルにシグナル強度を高め、最大5マーカーを同一切片上で染色する手法を確立した。自動免疫染色装置を用いるため、再現性の高い染色性を得る。 ②画像解析プログラムの開発:客観的かつ再現性の高い結果を得るため、病理画像デジタル化の実績を持つ当教室の技術員と共同してマーカー毎に最適化したシステムを開発している。コラーゲン定量には、当教室で開発した自動解析ソフトを用いる。 ③組織内T細胞性免疫活性・免疫抑制活性の数値化、臨床的意義の解明:細胞傷害性T細胞(CD8+細胞)の腫瘍内密度・T細胞-腫瘍細胞間距離の測定法を開発した。CD8+細胞の組織内分布は顕著に不均一であり、腫瘍辺縁部では受動免疫反応が成立しているのに対し、膵癌中心部では免疫抑制性微小環境によりCD8+細胞浸潤が顕著に制限され、その差がin situでの免疫抑制活性の指標に応用できることが示唆された。さらに患者予後との比較にて、腫瘍中心部におけるCD8+細胞密度は独立した予後因子であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は2年計画の2年目に当たる。当初は2年目に行う予定であった、「膵癌組織内CD8+細胞の空間的分布に着目した解析」を先行させたことにより、当初の予想と異なる方向で研究が進展した。すなわち腫瘍内不均一、特に腫瘍辺縁部と中心部の免疫反応に特徴的な違いがあることが見出され、腫瘍辺縁部と中心部のCD8+細胞密度を個別に測定することで、各症例におけるT細胞性免疫活性のみならず、免疫抑制活性を数値化する手法を確立した。この解析にかなりの時間を要したが、これらの指標が定量化がされたことで、膵癌の免疫抑制性微小環境に寄与するとされる多くの因子について、腫瘍辺縁部と中心部の免疫組織学的相違に基づく定性的手法をスクリーニングとして用いることができることが分かり、結果としてより効率的に候補因子を絞り込むことができた。 従って、当初の目的達成に向けて概ね順調に研究は進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の成果により、200例以上の膵癌症例について、T細胞性免疫活性に加え、膵癌微小環境の持つ免疫抑制活性を数値化することができた。本年度は、これらの指標を用いて、次の3細目を行い本研究の目的(膵癌微小環境サブクラス分類の提唱)を達成する。また得られた知見を国内外の学会で発表し、原著論文として報告し、成果をホームページ等で公開する。 ・予備実験により絞り込んだ有力な免疫制御候補因子の定量化 ・各症例のT細胞性免疫活性と有力な免疫制御因子候補との相関解析 ・膵癌微小環境サブクラス分類の提唱と意義の検証(予後・分子病理情報との比較)
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Causes of Carryover |
当初の計画よりも効率的なスクリーニング手法を確立することができたため、主に消耗品である抗体、蛍光試薬、ハードディスクなどのコストが削減できた。 一方で、先行研究により検討が必要な免疫抑制因子候補が新たに明らかとなった。次年度はこれらについても蛍光染色をベースにした定量化を行いたいと考えている。そのため、当初の予定よりも必要額が増えることが予想される。
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