2021 Fiscal Year Research-status Report
乳腺アポクリン癌の細胞形態とPI3K遺伝子変異との関連性の解明
Project/Area Number |
18K15096
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
野嵜 史 日本大学, 医学部, 助手 (10409021)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 乳癌 / アポクリン癌 / PIK3CA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、PI3K遺伝子変異発現調節による乳癌培養細胞形態の変化を検索することで、癌細胞の形態から分子治療標的となる遺伝子異常の存在が予測できるかどうかを明らかにし、病理形態診断の新たな可能性にせまることを目的としている。 PIK3CA遺伝子変異ホットスポット部に変異が認められていないことを確認した、乳癌培養細胞であるHCC1428において、PIK3CA遺伝子exon 20のkinase domainである(H1047R[c.3140A>G])部位の遺伝子変異導入のために、CRISPR-Cas9法を用い、エレクトロポレーション法にて変異導入を行った。plasmidを用いて導入効率条件を検討した上で、目的部位の遺伝子変異導入を行った。変異導入後の細胞よりDNAを抽出し、制限酵素法およびダイレクトシーケンス法を用いて検索し、変異導入が行われていることは確認された。次に導入細胞について、変異導入細胞の選別を試みたが、増殖が遅いためか、conditioned mediumなどを用いて生育を促したものの、シングルセルクローニングが困難であった。 ヒト乳癌手術検体をもちいて、PIK3CA遺伝子変異解析についての検討を行うために、すでに作成済のTMAブロックをもちいて、組織切片作成・DNA抽出をおこなったが、ブロックを作成してから時間が経過していたためか、DNA抽出およびpcr法による遺伝子増幅が困難であった。RNA抽出も試みたが同じく、pcr法による遺伝子増幅がであった。新たな症例を選定し、改めて組織切片作成・DNA抽出を施行中であり、PI3KCA遺伝子の変異を検索中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
乳腺アポクリン癌モデルとなる培養細胞(MDA-MB-453、MFM-223)とコントロールとなる乳腺非アポクリン癌(HCC1428)において、PIK3CA遺伝子における変異ホッ トスポットであるexon 9 (E542K[c.1624G>A], E545K[c.1633G>A])、exon 20 (H1047R[c.3140A>G])について遺伝子変異解析(ダイレクトシーケンス法)を行い、その結果、MDA-MB-453、MFM-223にはexon 20(kinase domain)のH1047R部分での変異が確認されHCC1428には変異ホットスポット部に変異は認められなかった。 この結果は今までに報告されている結果と合致しており、現在保有している3細胞は本研究遂行に適合する細胞であることが確認された。 このHCC1428をもちいて、PIK3CA遺伝子変異ホットスポットであ、exon 20(kinase domain)のH1047Rについての遺伝子変異導入を、CRISPR-Cas9法をもちいて行う方針であった。しかし、当初予定していた研究協力者が不在となったため、CRISPR-Cas9法によるCRISPR-Cas9法培養細胞の遺伝子変異導入のための、試薬選定、条件検討に想定外の時間を要した。また、変異導入後の乳癌培養細胞HCC1428生育も遅く、シングルセルクローニング法を行う時間を要した。所属機関変更による業務状況変化により、研究活動への支障が生じたため研究が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
PIK3遺伝子exon 20のkinase domainである(H1047R[c.3140A>G])部位の遺伝子変異導入した乳癌培養細胞HCC1428において、通常のシングルセルクローニング法では、細胞増殖が困難であることが予想される。シングルセルにより近い細胞数より細胞を増殖させ、変異導入細胞のより多い細胞集団を選定のうえ、変異細胞のみのクローニング法を試みる予定である。 ヒト乳癌手術検体をもちいてた、PIK3CA遺伝子変異解析については、抽出したDNAよりのpcr法による遺伝子増幅が困難であったが、ブロックを作成してから時間が経過したことが原因と考えられる。そのために、新たな症例を選定し、改めて組織切片作成したうえで、DNA抽出とpcr法による遺伝子増幅をおこない、PI3KCA遺伝子の変異の有無を検索する予定である。その後、PIK3CA遺伝子変異の有無の状況を、アポクリン癌と非アポクリン癌症例とで比較し、両者の間における変異発現状況の違いを探索したうえで、結果を論文化する予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた研究協力者が不在となったため、CRISPR-Cas9法によるCRISPR-Cas9法培養細胞の遺伝子変異導入のための、試薬選定、条件検討に想定外の時間を要し、また変異導入後の乳癌培養細胞HCC1428生育も遅く、遺伝子変異導入細胞のみの抽出化が遅延しているために、次年度使用額が生じた。次年度は、変異導入細胞の単離のための、培養細胞試薬、変異確認のための切断酵素試薬、詳細変異確認のためのダイレクトシーケンス法外注検査を、次年度資金を用いて行う。 さらに、ヒト乳癌手術検体をもちいて、PIK3CA遺伝子変異解析についての検討を行うために、すでに作成済のTMAブロックよりの抽出DNAからの遺伝子変異検索が困難であったために、次年度使用額が生じた。次年度は、パラフィンブロック薄切用品(スライドガラス、マイクロダイセクション消耗品)、DNA抽出試薬、pcr法試薬に次年度資金を用いる。 結果の論文化にあたり、英文校正、論文投稿費に次年度資金を用いる。
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