2018 Fiscal Year Research-status Report
isogenicなHCM変異iPS細胞由来心筋細胞を用いたHCM発症機序の解明
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18K15120
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三木 健嗣 京都大学, iPS細胞研究所, 特定助教 (10772759)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | HCM / MYH7-R719Q / isogenic iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はCRISPR/Cap9技術を用いて複数のHCM変異に対するisogenicなiPS細胞株の樹立し、その解析を行った。HCM変異については、これまでの報告から主な原因遺伝子とされているMYH7(患者全体の~14%)とMYBPC3(同~20%)を対象に、より重篤と報告されているMYH7-R403Q, MYH7-R719Q, MYBPC3-R502Wの3種類を選択した。isogenicコントロール株(親株)として2種類の株を使用し、各親株において上記4種類の変異株の樹立を試みた。その結果、MYH7-R403Qに関しては2つの株共に樹立ができなかったが(下記進捗参照)、その他の2種類の変異株については2つの親株で樹立できた(計4株)。これらの株については、点変異はシーケンスにおいてヘテロ変異が確認でき、全て核型解析及び未分化マーカーの発現、心筋分化能は正常であることが確認できた。 これらのiPS細胞を心筋細胞へ分化誘導して精製し、ハイコンテンツイメージングシステムで心筋肥大の表現型を確認したところ、MYH7-R719Qに関しては2株とも各isogenicコントロール株に比して肥大を確認できたのに対し、MYBPC3-R502Wに関しては2株ともisogenicコントロール株と差が認められなかった。肥大傾向が認められたMYH7-R719Qの2株に関しては、isogenicコントロール株も含めてRNA-seq解析を進めている。 本年度において、異なるバックグラウンドのHCM変異株の樹立に成功し、心筋肥大も確認することができた。MYBPC3-R502Wに関しては、樹立はできたが肥大が認められないことから、MYBPC3-truncation変異の樹立も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記に示すように、MYH7に関してはR403QとR719Qという変異を試みたが、R403Qは樹立には至らなかった。その原因として、MYH7とMYH6という二つの遺伝子の配列が類似しており、特にR403Q前後の配列は全く同じであったため、MYH7-R403Qの変異が入った株は樹立できたが、それらの株は全てMYH6にも何かしらの変異(insertion or deletion)が入っていた。よって、MYH7に関してはR719Qのみをターゲットとするが、複数(2種類)のバックグラウンドの株を樹立することにシフトし、達成した。 MYBPC3-R502Wに関しても、上記で2種類のバックグランドを使用することにシフトしたため、この変異に関しても同様に2種類の親株で実施し、樹立に成功した。しかし、この変異に関しては心筋への分化後においても肥大は認められなかった。そのことから、現在はMYBPC3-truncation変異の樹立も試みており、コンストラクトの設計からiPS細胞株の樹立まで達成した。現在心筋細胞への分化を行っており、タンパク質の欠損を確認する段階である。 また、本年度は複数のiPS細胞の樹立及び心筋細胞の表現型の確認が目標であったが、これらは上記のように達成できたと考える。また、MYH7-R719Qに関してはすでに遺伝子発現解析に進めているため、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は遺伝子発現解析による候補ターゲットの探索を目標とする。 現在樹立中であるtruncation変異において肥大傾向が確認できれば、それらの遺伝子発現解析と現在解析中のMYH7-R719Qの結果により共通の因子を探索する。もしMYBPC3-truncation変異においても肥大が確認されなければ、2つのバックグランドのMYH7-R719Q変異に共通する因子を同定する。 MYBPC3-R502W変異において肥大傾向が認められなかったことに関しては、MYBPC3変異は臨床的にも上記のMYH7変異よりmildであることから、in vitroにおいてより成熟した心筋細胞を得ることが必要なのではないかと考える。その解決策として、この若手研究をさらに促進させるべく採択された国際共同研究強化(A)の課題である「脱細胞化マトリックスを用いた心筋組織の創出」に取り組みたいと考えている。次年度中の渡航を予定しており、これまでにない高度な心筋組織の創出を目指し、本研究課題へ応用していく予定である。
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Causes of Carryover |
物品購入に関して、isogenic株の樹立において目的株の樹立に至らなかった(他遺伝子への変異や肥大化が確認できなかった等)ものがあり、予想より細胞の維持・分化のコストが少なくなった。現在新規変異株を樹立中であるため、それらの予算を次年度へ繰り越している。
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