2019 Fiscal Year Research-status Report
虚血組織傷害後の炎症収束と組織修復におけるマクロファージと制御性T細胞の機能解明
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18K15129
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
駒井 恭子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (80574590)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 炎症 / 組織修復 / 制御性T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は心臓における炎症亜急性期の組織修復性マクロファージおよび慢性期に浸潤する抑制性T細胞(Treg)の分化誘導機構を明らかにし、炎症の終息と組織修復の機序を心筋梗塞をモデルに解明するものであった。組織傷害による炎症のスキームは大枠が理解されてきたが炎症の終息と組織修復のメカニズムの解明は今後の課題である。本研究によって炎症性から修復性マクロファージへの転換機構が解明されれば世界的に初めての成果となり、また、Tregの組織修復機能を解明することで、心筋梗塞に限らず、新たな炎症の制御法の開発が期待できる点で画期的であると考え、大きく分けて以下の二点について研究に着手した。実際には心筋虚血モデルではその個体差が大きく、結果の解析が困難なことが多かったため、同時に大動脈結紮による心筋圧負荷モデルにも取り組んでおり、現在は圧負荷モデルを中心に解析を行っている。 (1)亜急性期に修復性マクロファージを誘導する因子および転写因子を明らかにする。これまでの研究でMHC classⅡを発現するCD11b陽性細胞は大動脈結紮後7日をピークに増加し、その後減少していることが分かった。 (2) 亜急性期~慢性期の肥大心筋における炎症細胞の動態を把握する。①亜急性期~慢性期の肥大心筋における T 細胞の心不全心筋組織への影響を明らかにする。心筋圧負荷モデルでは大動脈結紮後2週から6週にかけてT細胞は増加しており、T細胞を欠如するCD3欠損マウスでは心筋肥大が増悪することが分かった。② ①での影響が T細胞のうち何によるものなのかを解析するためT細胞欠損マウスに各T細胞分画を移入したモデル、およびTreg欠損マウス(DREGマウス)の心筋圧負荷モデルの解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
T細胞のうちどの分画が病態に重要であるかを特定していたが、当初のに予想に反しCD8分画が圧負荷時の心筋細胞の肥大に重要であることが分かってきた。Tregに加えCD8分画の影響を明らかにするため、時間がかかっているが、現在CD8T細胞分画の心筋細胞への影響をRNAシークエンスで検討する段階まできている。またその機序についてはマクロファージを介す点、筋線維芽細胞を介す点について検討を開始しており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在CD8T細胞分画の心筋細胞への影響をRNAシークエンスで検討する段階まできている。CD8T細胞がないと圧負荷時の代償性肥大が過剰に進むことが分かっている。CD8T細胞のあるなしで圧負荷モデルの心筋を比較することで、心筋になにが起きているかを明らかにする。 またその機序について、平常時と圧負荷時の心筋CD8T細胞の遺伝子発現の違いをRNAシークエンスで比較する。CD8T細胞がないと炎症性マクロファージの増加がより進むことが分かってきた。CD8T細胞が炎症性マクロファージの増加を抑えている、もしくは炎症性から修復性への転換を促している可能性及びその因子について検討する。現在まで、圧負荷モデルの代償性心筋肥大におけるCD8T細胞の役割は重要視されていなかったが、これが明らかになれば画期的と考え、当初の研究目的であるTregの機能解明と並行して進めていく予定である。
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