2020 Fiscal Year Research-status Report
サルコメア合成機構の解明に基づいた新規的筋萎縮治療法の開発
Project/Area Number |
18K15130
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
林地 のぞみ 順天堂大学, 医学部, 特任助教 (80772433)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 筋衛星細胞 / サルコメア / 筋萎縮疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
重症の糖尿病、心疾患、末期のエイズ、がん、筋ジストロフィー、フレイル、サルコペニアといった疾患は筋萎縮を呈する。筋量の維持は病態の改善および健康寿命の延長に重要である。筋萎縮の予防及び改善のために筋衛星細胞を用いた研究、栄養学に基づいた研究、運動療法による研究など様々な方面からアプローチがされているが、有効な治療法はいまだ確立されていない。本研究は骨格筋の最小単位であるサルコメアの合成機構を明らかとし、サルコメアの合成を促進することで筋萎縮疾患を予防および改善を目指す。 サルコメアの分解と合成は常時おこっており、分解と合成のバランスにより筋量が決まる。例えば、サルコメアの分解が合成を上回った場合筋量は低下する。逆にサルコメアの合成が分解を上回れば筋量は増加する。現在までに申請者はサルコメア合成に関与する因子を同定し、当該因子の全身欠損マウスを用いて骨格筋の維持および再生に重要であることを明らかとした。さらに、株化骨格筋前駆細胞を用いて筋管形成および筋管の維持に重要であることを発見した。従来骨格筋の治療に対してはステロイド等が挙げられるが、本研究は治療法の確立されていない筋萎縮疾患に対してサルコメアの合成の観点から新しい治療法に提案することを最終目標とする。 申請者は今までの研究成果を国際学会1回、国内学会4件 (うち1件は招待講演) 、寄稿 1件で発表を行っている。昨年度はCOVID19の影響で海外学会や国内の学会参加が困難であり参加を見送ったが、今年度は可能であれば積極的に参加する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までに顆粒球コロニー刺激因子受容体欠損マウスにおいて、筋損傷後筋再生がおこらず、また加齢と共に筋萎縮を呈することに着目しin vivoを中心に研究を行ってきた。 本年度は株化骨格筋前駆細胞C2C12においてG-CSFとG-CSF中和抗体、G-CSF受容体のsiRNAを用いて筋分化に関する検討を行った。結果、G-CSFを添加しても拍動する筋線維を得ることはできなかったが、添加することで1筋管あたりの融合数、太さ、長さ共に有意に増加した。また、G-CSF中和抗体の添加およびG-CSF受容体のsiRNAをおこなうと1筋管細胞あたりの融合数、太さ、長さ共に有意に減少した。また筋融合時に重要な遺伝子myomekerの発現をG-CSF添加及び非添加で比較したところ、G-CSFを添加した群においてmyomekerの発現が有意に上昇した。以上の事からG-CSFの添加は筋分化を促進する作用を持つことを明らかとした。次に初代筋衛星細胞の培養から、G-CSF受容体は筋衛星細胞から拍動する筋線維までと長期間発現していることを見出だした。また、G-CSF受容体欠損マウスから樹立した筋衛星細胞は融合がおこらず筋分化抵抗性を示す。 最後に筋分化を促進するG-CSFシグナルの下流の探索を行った。結果、糖鎖修飾因子が関与していることを見出だした。当該糖鎖修飾因子欠損マウスは出生後3日以内に7割が死亡し、生き残った産仔も著しい成長不全、自立ができない、背骨の湾曲など重症型筋ジストロフィー様の症状を呈する。実際、糖鎖修飾因子欠損マウスの骨格筋は筋再生不良を呈する。筋組織切片を観察すると中心核の異常、筋線維の異常が認められる。電子顕微鏡で観察を行うとサルコメアの異常が観察された。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度である。本研究の最終目標は新規の筋萎縮関連疾患の治療法の開発である。そこで、今までに見出だした糖鎖修飾因子の発現を上げるスクリーニング化合物の探索を行う予定である。スクリーニング化合物の同定には創薬機構のライブラリーを利用する予定である。同定した化合物は筋傷害モデルマウスおよび筋ジストロフィーモデルマウスに投与し筋再生促進作用の有効性を検討する。現在はプレスクリーニングに向けて準備を行っている。 今までは糖鎖修飾因子の全身欠損マウスについて解析を行ってきた。しかし糖鎖修飾因子は脳や神経など幅広く発現しており、骨格筋に直接的に関与しているか不明である。そこで骨格筋特異的糖鎖修飾因子欠損マウスを作成し評価を行う。申請者はすでに糖鎖修飾因子のfloxマウスとACTA Creプロモーターマウスを入手しており、既に交配を行っている。交配により得られた骨格筋特異的糖鎖修飾因子欠損マウスは発生のステージに合わせて骨格筋の表現型をHE染色や免疫化学染色など様々な染色により評価する。またGrip testやトレッドミルといった運動機能に関しても精査する。他にも、筋再生能を評価するためカルディオトキシンを投与し再生筋の評価を行う。 最後に筋分化における糖鎖修飾因子の作用機序を解明するために、糖鎖修飾因子により糖鎖修飾される分子をMAS解析により同定する。同定した分子をC2C12においてsiRNAにより発現を低下させ、筋分化能の変化、筋融合の評価を行う。
|
Causes of Carryover |
前年度COVID19により延期せざるを得ない状況となり、研究計画がいくつか変更があったため。
|
Research Products
(1 results)