2019 Fiscal Year Research-status Report
集団投薬後の伝播再興に着目した不均一なマラリア流行地での伝播ダイナミクスの解明
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18K15139
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
加賀谷 渉 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (20782577)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マラリア / 集団投薬 / 伝播 / 分子疫学 / ケニア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ケニア・ヴィクトリア湖内のNgodhe島における集団投薬の前後のフィールドサンプル、および集団投薬中にNgodhe島へ流入したサンプルを対象として、熱帯熱マラリア原虫の多型遺伝子pfmsp1, pfmsp2による遺伝子型判定を実施した。集団投薬前後では、重複感染指数(MOI: multiplicity of infection)には有意な変化は認めず、集団投薬および同時期に実施された殺虫剤処理蚊帳の再配布には、伝播強度抑制の効果はなかったことが示唆された。一方で、pfmsp1の3つのallele family frequencyについては、集団投薬前(K1:MAD20:RO33=44:34:21)と集団投薬後(K1:MAD20:RO33=65:13:22)の比較において有意な変化が認められた(p=0.004)。さらに、集団投薬中に外部から対象地へ訪れた集団から得られたサンプルでのpfmsp1のallele family frequencyは、集団投薬後のサンプルのallele family frequencyとほぼ同様であった。この結果は、集団投薬後の伝播再興には、投薬後の残存原虫に由来する感染拡大よりも外からの感染流入が寄与していることを示唆する。集団投薬後の原虫集団には既知の薬剤耐性マーカーが認められなかった点とあわせて、投薬レジメンの有効性は間接的に示されたと考える。 現在これらのサンプルについて、ロンドン公衆衛生熱帯医学校において共同研究として全ゲノムシークエンス解析を開始しており、得られたデータからマイクロサテライト解析を実施予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りmsp1, msp2による解析を進め、集団投薬後の伝播再興に流入する感染が寄与することを示唆する結果を得ることができ、集団投薬の投薬レジメンが有効であることが間接的に示された。昨年度同定した疫学的データとあわせ、伝播再興の要因を疫学的、遺伝学的両面から明らかにすることができた。より解像度の高い集団遺伝学的評価については、現在継続中である。また、Ngodhe島および周辺対象地域において横断的疫学調査を実施し、最新のマラリア流行状況を把握することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度は、研究期間に得られた疫学的解析結果と遺伝学的解析結果をあわせ、対象地域における伝播ダイナミクスの構成を表現する。また他地域の不均一なマラリア流行地との比較から、共通項を探る。研究対象地域における室内残留型殺虫剤スプレー(IRS)などの最新のマラリア対策やその効果、新型コロナウイルス感染症によるマラリア流行(診断・治療)への影響についてもまとめる。
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Causes of Carryover |
共同研究先へのサンプル輸送などに手間取り、今年度に予定していたマイクロサテライト解析を次年度に繰り越すことになったため。
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Research Products
(7 results)