2018 Fiscal Year Research-status Report
The host-parasite relationship mediated by Strongyloides venestatin/RAGE axis
Project/Area Number |
18K15140
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
坪川 大悟 北里大学, 医学部, 助教 (30714901)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | RAGE / RNA干渉 / 糞線虫 / 幼虫体内移行 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、in vivo評価系を用いたベネスタチンの機能解明のため、以下の研究を中心に行った。 1.RNA干渉法によるベネスタチン遺伝子ノックダウン(Kd)糞線虫の作製と幼虫体内移行に対する影響の解析:ベネスタチンの遺伝子配列をもとに、2本鎖RNA(dsRNA)を作製した。ベネズエラ糞線虫の感染型幼虫(iL3)および肺内期幼虫(LL3)をdsRNA含有培地内に24-72 h浸漬した。iL3にベネスタチン遺伝子のKd効果はみられなかったが、LL3では72hの浸漬が最も効果的でベネスタチンmRNAの発現が82.8%低下した。Kd LL3感染マウスでは、対照LL3感染マウスに比べ、肺への移行幼虫数が59.3%減少していた。Kd LL3感染直後のマウス皮下組織において、虫体の周囲に浸潤する宿主細胞数の有意な増加が認められた。 2.RAGE欠損マウス(RAGE-/-)を用いた、糞線虫感染動態と宿主応答の解析:野生型(Wt)とRAGE-/-それぞれに、ベネズエラ糞線虫iL3を皮下感染し、幼虫移行経路である皮膚、肺、小腸を回収した。幼虫が肺に到達する感染3日目において、Wtと比較してRAGE-/-では、肺の点状出血斑の大きさが増大し、肺への移行幼虫数も有意に増加した。幼虫の移行経路である皮膚、肺、小腸について病理組織学的検討を行った結果、Wtの皮下組織で確認された虫体周囲のマクロファージを中心とした細胞浸潤がRAGE-/-では有意に抑制されていることが分かった。 以上より、ベネスタチンは宿主応答を抑制するのに対し、RAGEは糞線虫幼虫に対し免疫応答を亢進する働きを持つことが示唆された。RAGE-/-をKd幼虫感染実験に導入することで、in vivoでのベネスタチンのRAGEを介する機能をマップ化できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、糞線虫の体内移行に関与する分泌蛋白「ベネスタチン」の、宿主炎症反応の発端となるシグナルを伝達する「RAGE」を介する寄生生理的機能を明らかにすることを目的としている。この目的達成のためには、in vivo評価系を用いたベネスタチンの機能解明が不可欠である。RAGE欠損マウス(RAGE-/-)を導入し、RNA干渉法によりベネスタチン遺伝子Kd糞線虫を作製するこで、これらの組み合わせを変えて感染実験を行うことが可能となり、感染動態や宿主応答を比較することで、ベネスタチン/宿主RAGEを介する寄生生理機構が明らかとなると考えられる。2018年度は実際にRAGE-/-を導入し、糞線虫感染実験を行い、基礎となる感染動態のデータを得た。さらには、RNA干渉法によりKd糞線虫の作製技術を確立し、ベネスタチンない場合での幼虫体内移行に対する影響を解析し、in vivoにおけるベネスタチンの機能を判断する結果を得ることができた。従って、おおむね順調に進展しているとの判断をした。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.In vitro評価系を用いたベネスタチンの機能解明 目標:ベネスタチン/RAGE介在性によるシグナル伝達、下流域エフェクターの動態を明らかにする。①リガンド能の解明:べネスタチンとRAGEの結合親和性について既知リガンドを用いて量的、質的差異の検討を行う。大腸菌により発現したRAGEの各ドメインとの結合試験を行い、結合ドメインを特定する。細胞膜にRAGEを高発現する培養細胞[HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)] とベネスタチンを共培養し、細胞内におけるRAGEとベネスタチンの共局在性を調べる。②応答経路の解明:HUVECを用いて、べネスタチン共存下におけるRAGEシグナル経路とエフェクター産生の挙動への影響を量的、質的に解析する。グリセルアルデヒド(Gla)-BSAでHUVECを刺激し、活性酸素種の産生、RAGE下流分子のリン酸化、サイトカインの発現へのベネスタチンの作用を明らかにする。 2.In vivo評価系を用いたベネスタチンの機能解明(2018年度の続き) 目標:寄生虫感染性や宿主炎症反応へのベネスタチン/RAGE経路の役割を明らかにする。①炎症反応に与える影響:RAGE介在性炎症を惹起するGla-BSAを野生型とRAGE-/-に投与する。これらのモデルマウス作製過程において、ベネスタチン投与群と非投与群を用意する。皮膚侵入性寄生虫の移行経路に当たる皮下、肺組織を重点的に病理組織学的に比較検証する。②In vivo感染マップの作成:ベネスタチンkd糞線虫感染実験にRAGE-/-マウスを導入し、糞線虫寄生におけるべネスタチンとRAGEの相互作用を検討する。感染マウスから回収された虫体数や組織に浸潤する免疫担当細胞の種類や細胞数を免疫組織染色により比較する。血清中のサイトカイン量を測定する。以上より、べネスタチンのin vivoにおける役割を総括しマップ化する。
|
Causes of Carryover |
2018年度は、動物を使用した感染実験を中心に行った。予算計上していたRAGE欠損マウスの導入に関しては学内施設を用いた受精卵からの作製に成功したので、本予算からの支出を抑えることができた。さらに学内研究費で消耗品類、免疫組織化学用試薬を購入することができた。以上の理由から、当初予定していた使用金額よりも少ない支出となった。 次年度使用計画については、本研究では、種々の遺伝子及び蛋白解析を日常的に実施することから、試薬類はプライマー作製、N末端配列の解析、生化学・蛋白質合成試薬、最新の遺伝子連結試薬などの購入費として予定している。分析キットは迅速に蛋白合成や遺伝子発現を確認でき、すでに標準化されたプロトコールの上で実験が進捗できるキット試薬の購入に充てる。さらには、寄生虫の継代や感染実験に用いるラットやマウスの購入費や哺乳細胞や寄生虫の培養に用いる培地と血清の購入費としても計画している。
|
-
[Journal Article] Positive phototropism is accelerated in Biomphalaria glabrata snails by infection with Schistosoma mansoni.2018
Author(s)
H Maeda, T Hatta, D Tsubokawa, F Mikami, T Nishimaki, T Nakamura, Anisuzzaman, M Matsubayashi, M Ogawa, CP da Costa, N Tsuji
-
Journal Title
Parasitology International
Volume: 67
Pages: 609-611
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-