2020 Fiscal Year Research-status Report
The host-parasite relationship mediated by Strongyloides venestatin/RAGE axis
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18K15140
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
坪川 大悟 北里大学, 医学部, 助教 (30714901)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 糞線虫 / RAGE / ベネスタチン / 幼虫体内移行 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 終末糖化産物受容体(RAGE)のベネスタチン結合ドメインの解析:大腸菌発現系を用いて、3種のRAGEドメイン(V, C1, C2)の組換え蛋白を作製した。ベネスタチンとの結合能をプレート試験で比較したところ、C1ドメインとC2ドメインへ結合性を示した。C1ドメインへの結合が最も顕著であった。また、カルシウムを含まない緩衝液や、キレート剤(EDTA)を用いて反応性を検討することにより、C1ドメインとC2ドメインはカルシウム存在下でベネスタチンと結合することを明らかにした。 2. RAGEとベネスタチンの3次元結合モデルのin silico解析:ベネスタチンの3次元構造モデルをSwiss model programを用いて作製した。RAGEとの3次元結合モデルをClus Pro 2.0を用いて解析した。RAGE C1ドメインを中心としたベネスタチンとの結合モデルが示された。 3. RAGE欠損マウス(RAGE-/-)を用いた、ベネスタチンノックダウン(Kd)糞線虫感染動態の解析[宿主皮膚組織からの幼虫の移行]: 糞線虫感染におけるベネススタチンとRAGEの関連性を調べるため、RNA干渉法によるKd糞線虫を用いたRAGE-/-への感染実験を行った。野生型(Wt)とRAGE-/-それぞれに、Kd糞線虫幼虫、及び対照糞線虫幼虫を皮下感染した。通常、感染後の皮膚組織における幼虫由来の遺伝子発現は、幼虫の肺への移行に伴い低下する。感染後のWt皮膚組織において、対照幼虫感染マウスに比べKd 幼虫感染マウスでは、糞線虫アクチン遺伝子が高発現していることがRT-PCRにより示された。RAGE-/-では対照幼虫とKd幼虫の間で差はみられなかった。以上より、糞線虫幼虫はベネスタチンを分泌しRAGEに作用させることで皮膚からの体内移行を有利に進めることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、糞線虫の体内移行に関与する分泌蛋白「ベネスタチン」の、宿主炎症反応の発端となるシグナルを伝達する「終末糖化産物受容体(RAGE)」を介する寄生生理的機能を明らかにすることを目的としている。本研究の目的達成のためには、in vitro とin vivo 両実験系からのアプローチが必要となる。2020年度は、RAGEドメイン(V, C1, C2)を作製し、ベネスタチンとの結合親和性をプレート試験により明らかにした。さらには、in silico解析により、プレート試験の実験結果を支持する3次元結合モデルが示された。RAGE-/-へのK d糞線虫感染実験を行い、糞線虫幼虫の皮膚からの体内移行がベネスタチン/RAGE経路により促進されることを実証した。2018-2019年度には、糞線虫はベネスタチンによりマクロファージを中心とした炎症細胞浸潤を抑制し、幼虫移行を有利に進めることを明らかにしている。これまでに得られた成果から「おおむね順調に進展している」との判断をした。
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Strategy for Future Research Activity |
In vivo評価系を用いたベネスタチンの機能解明 目標:寄生虫感染性や宿主炎症反応へのベネスタチン/RAGE経路の役割を明らかにする。 ①炎症反応に与える影響:RAGE介在性炎症を惹起するGla-BSAを野生型RAGE-/-に投与する。これらのモデルマウス作製過程において、ベネスタチン投与群と非投与群を用意する。皮膚侵入性寄生虫の移行経路に当たる皮下、肺組織を重点的に病理組織学的に比較検証する。血清中のサイトカイン量の比較も行う。②In vivo感染マップの作成:昨年に引き続きRAGE-/-マウスを用いたkd糞線虫感染実験を行い、血清中や幼虫移行組織のサイトカイン量を測定する。以上より、べネスタチンのin vivoにおける役割を総括しマップ化する。
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Causes of Carryover |
2020年度は、in vitro評価系を使用した実験を中心に行った。緊急事態下で動物の購入が困難になった時期もあり、動物実験関連経費の支出が予定より低くなった。また、参加予定であった学会が中止となり、旅費の支出がなくなった。以上の理由から、当初予定していた使用金額よりも少ない支出となった。次年度使用計画については、本研究では、種々の遺伝子及び蛋白解析を日常的に実施することから、試薬類はプライマー作製、抗体、生化学・蛋白質合成試薬などの購入費として予定している。分析キットは迅速に蛋白合成や遺伝子発現を確認でき、すでに標準化されたプロトコールの上で実験が進捗できるキット試薬の購入に充てる。寄生虫の継代や感染実験に用いるラットやマウスの購入費や哺乳細胞や寄生虫の培養に用いる培地と血清の購入費としても計画している。
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