2019 Fiscal Year Research-status Report
シャーガス病の創薬標的探索に資する遺伝子改変手法の開発
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18K15141
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
高木 悠友子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (50783669)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 感染症 / 創薬標的 / 遺伝子組換え / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、CRISPR/Cas9の活用によりトリパノソーマ原虫においても遺伝子ノックアウトが簡便に行えるようになってきた。Trypanosoma cruziには化学的トランスフェクション試薬が使用できないため、エレクトロポレーションによる核酸導入が現状唯一のgRNA導入手法として使われている。しかし、致死性のノックアウトが発動した場合はそれ以上原虫が増えないため、スケールアップが難しいエレクトロポレーションでは分子生物学的な解析のための大量のサンプルを回収できないという問題がある。また、宿主細胞内に寄生するヒト感染ステージの原虫では、宿主細胞の存在が障壁となって原虫に直接gRNAを導入できないという問題もあった。そのため、大量に原虫を増殖させた後、あるいは原虫を宿主に寄生させた後にCas9発現を誘導できるノックアウトシステムを確立することが解決策として考えられる。
2019年度は、当初の目標ではCas9発現をtet on/offで誘導し、ヒト感染ステージ特異的にターゲット遺伝子の必須性を確認することにより、創薬標的となり得る原虫の増殖に必要な遺伝子を特定する予定であった。しかし、宿主細胞内でしか増殖できないと思われてきたヒト感染ステージの原虫を、一定期間であれば宿主細胞外で純粋培養することが可能な条件を発見したことにより、感染ステージの原虫に直接gRNAを導入してノックアウトを行う手法を確立することができた。この代替アプローチにより、ステージ特異的なノックアウトという目標自体は達成することができた。その一方、当初予定していたtetシステムにはまだ問題があり、標的遺伝子が確実にノックアウトされたかどうか、オフターゲット効果がどの程度おきているかを詳細に検証する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
tet on/offによるCas9発現による遺伝子ノックアウトについて、当初の予定では、tetシステムをトリパノソーマ原虫で構築した後、オフターゲット効果の有無を検証してシステムを完成させるところまでを目標としていた。Cas9発現で原虫が死んだ場合、まだオフターゲットの可能性を排除しきれないため、当初の計画よりやや遅れていると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
創薬標的として選抜された少数のターゲット遺伝子だけでなく、幅広い遺伝子をコントロール標的としてノックアウトすることにより、実験系の最適化を行う予定である。
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Causes of Carryover |
高価な市販試薬を手作りに変えるなどして工夫することにより出費を抑えた。差分は次年度に消耗品費や人件費として使用する予定である。
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