2020 Fiscal Year Research-status Report
シャーガス病の創薬標的探索に資する遺伝子改変手法の開発
Project/Area Number |
18K15141
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
高木 悠友子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (50783669)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 感染症 / 創薬標的 / 遺伝子組換え / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
Trypanosoma cruziには哺乳類細胞に使用するような化学的トランスフェクション試薬が効かないため、エレクトロポレーションが現状唯一の核酸導入手法として使われている。近年、CRISPR/Cas9の活用によりトリパノソーマ原虫においても遺伝子ノックアウトが簡便に行えるようになってきた。しかし致死性のノックアウトが発動した場合はそれ以上原虫が増えないため、スケールアップが難しいエレクトロポレーションによるgRNA導入では分子生物学的な解析のための大量のサンプルを回収できないという課題がある。そのため、大量に原虫を増殖させた後にCas9発現を誘導できるよう、Tet発現誘導によるノックアウトシステムの構築を試みている。
2020年度は、EGFP-fusionされたCas9酵素の発現をテトラサイクリンのon/offにより誘導できることを蛍光観察により確認した。gRNAはCas9と同じプラズミド上に配置されており、Cas9と同時にTet誘導されるように設計した。これらを同時発現することにより、原虫の増殖能に影響が出ることがいくつかのgRNAで観察された。Cas9/gRNAの発現により増殖効率の低下した原虫は、細胞肥大や鞭毛数異常など遺伝子ノックアウトの影響がみられたが、全ての原虫に一様に起こるわけではなく、個々の原虫のEGFP-Cas9発現量にはかなりのばらつきがあることが分かった。そのためLimiting dilutionによるクローン化を試みている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
組織改編にともなう研究室の引っ越しがあり、2カ月ほど実験を行えない期間が生じた。また、新型コロナウイルス感染症への対策により、新規に雇用したテクニカルスタッフが約1カ月間出勤できなかったり、自身もテレワークにより実験を行えないなどの影響が生じた。
|
Strategy for Future Research Activity |
標的遺伝子が確実にノックアウトされたかどうかを酵素アッセイやゲノムDNAの配列解析により確認し、原虫の表現型変化がオフターゲット効果ではないことを検証する。このノックアウトシステムが構築されたら、スケールアップした原虫カルチャーからサンプルを回収し、標的遺伝子が下流の生合成パスウェイに与える影響を解析する。
|
Causes of Carryover |
組織改編にともなう研究室の引っ越しがあり、2カ月ほど実験を行えない期間が生じた。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、新規に雇用したテクニカルスタッフが約1カ月遅れて業務を開始せざるを得なかったり、自身もテレワークを余儀なくされて実験を行えないなどの影響があった。こうした状況で予算の執行に遅れが生じ、次年度への繰り越しとなった。繰り越した研究費は、遅れた分の実験にかかる消耗品と人件費に使用する。
|