2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K15147
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
後藤 和義 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (20626593)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フェロトーシス / ビブリオ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、Vibrio alginolyticusのIII型分泌装置エフェクターであるVepAによるHeLa細胞死誘導に鉄が関与しているのではないとの仮説の下、鉄が関与する細胞死のメカニズムについて解析を行うものである。初年度は、組換えVepAタンパクを精製し、HeLa細胞内にトランスフェクションする実験を立ち上げ、VepAタンパクによる細胞死の評価を試みた。 組換えHis-tag融合VepAタンパクを大腸菌発現系で生産させ、キレート担体カラムで精製した。得られたタンパクをセンダイウイルスベクターに封入し、細胞にトランスフェクションを行った。ベクターのみの場合やBSAを封入したものをトランスフェクションした場合、細胞死はほとんど認められなかったのに対し、VepAを封入した場合には細胞死が誘導された。VepAを熱変性させたものではこの細胞死誘導活性は消失した。また、この細胞死にはリソソーム内容物の漏出が伴うことをアクリジンオレンジによる蛍光染色で確認した。 これらのことからVepAタンパクはそれ単体でV. alginolyticusが誘導する細胞死を再現できることが明らかとなった。 二価鉄キレート剤によるVepA依存性細胞死の抑制作用は、菌体の場合とリコンビナントVepAのトランスフェクションの場合で異なる結果が得られた。すなわち、菌体では二価鉄キレート剤はその細胞死を強く抑制するのに対し、トランスフェクションの場合はほとんど抑制されなかった。この原因については現在究明しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画の通り、初年度中にリコンビナントVepAの細胞内導入による細胞死の系を立ち上げることができた。しかしながら、二価鉄キレート剤による細胞死抑制に関して予期しない結果が得られた。この結果は再現性が取れており確実なものと考えられる。そのため、当初の計画では初年度中に細胞内の二価鉄イオンの動態を観察することが含まれていたが着手が若干遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではV. alginolyticusのVepAによる細胞内二価鉄の動態変化が細胞死を誘導するという仮説を立てた。そこではVepAタンパクによる細胞死が二価鉄イオンに起因することを証明する必要がある。初年度では二価鉄イオンキレート剤であるビピリジルによるVepA誘導細胞死の抑制が観察できなかった。この実験は本研究の鍵となるデータであるため、種々の代替案を試行しながら対処する。具体的には、(1)二価鉄イオンキレート剤のデフェロキサミンを使用する。(2)鉄貯蔵タンパクであるフェリチンを細胞内にトランスフェクションし遊離二価鉄イオンを吸着させる。等の方法を用いる。 また、細胞内二価鉄イオンの動態を可視化する方法については上記実験と並行して実施していく予定である。ただし、フェロトーシスによる細胞死としてVepAは検証中であるため、フェロトーシスの誘導にはよく知られたエラスチンを用いる。エラスチンによるフェロトーシスモデルを用いて各種の細胞内二価鉄の可視化方法を試行していく予定である。
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Causes of Carryover |
初年度に予定していた学会に参加できなかったため、次年度使用額が発生した。次年度に学会参加旅費として使用する計画である。
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