2019 Fiscal Year Research-status Report
らい菌が潜伏する宿主細胞に蓄積される特定のTAGを制御する細胞内メカニズムの解明
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18K15150
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
谷川 和也 帝京大学, 薬学部, 助教 (10443110)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | らい菌 / GPAT3 / triacylglycerol |
Outline of Annual Research Achievements |
ハンセン病の起因菌であるらい菌は、マクロファージを宿主として寄生・増殖する一方で、宿主内に大量の脂質を脂肪滴として蓄えることが特徴の一つである。蓄積された脂質は、らい菌にとって有利に働くことが考えられるが、利用される脂質やその役割についてはよくわかっていない。我々は昨年度までに、GPAT3欠損株を作製しトリアシルグリセロール(TAG)代謝がらい菌にとって重要である可能性を示してきた。そこで、今年度は蓄積される脂質とらい菌との関係について検討を行なった。まず、FITC標識したらい菌を感染させ、WT細胞株と比較して細胞内寄生への影響をFACSや蛍光顕微鏡で評価した。その結果、GPAT3欠損株ではらい菌の細胞内局在が顕著に抑制されることが示された。また、LipidTox染色によって油滴を可視化した多重染色の結果、細胞内に感染したらい菌はこの油滴に極めて近くに局在していたことから、細胞内で感染を維持するためには油滴の存在が重要であると考えられた。そこで、らい菌がその油滴を利用している可能性についてさらに検討を行なった。すなわち、らい菌感染マクロファージに脂質代謝ラベル(14C-stearic acid)を添加し、その代謝物がらい菌に取り込まれているかを評価した。実験的にはらい菌を感染させた細胞より菌を単離し、Bligh-Dyer法に基づきtotal lipidを抽出した。その後、HPTLCで脂質の分離を行いC14-stearic acidの代謝産物をバイオイメージングアナライザーで可視化した。その結果、WT細胞株ではらい菌のMOI依存的にTAGのシグナルが増強されたが、GPAT3欠損株では完全に抑制された。これらのことから、GPAT3による油滴形成はらい菌が細胞内に感染を維持するためには必要不可欠であり、持続するためにその一部を自身に取り込んでいることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験的にらい菌の単離など、苦戦してしまった部分はあるが、その方法についてしっかり確立することができたので、特に問題なく実験は進められている。また、らい菌の供給についてもハンセン病研究センターと密に連絡がとれているため、材料についても問題ない。研究のデスカッションについても適宜行えており、実験上の問題は早期に解決できているため、順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、最終年度なので論文投稿を見据えて研究を進める。本研究で、データとして必要なのは感染細胞において蓄積される油滴形成のらい菌の生存への影響についてである。そこで、これまで我々が報告している、らい菌生菌に高発現するpseudogeneに着目し、らい菌のviabilityのインデックスとして利用する。すなわち、WT細胞およびGPAT3欠損株を用いてらい菌を感染させ、継時的に細胞を回収する。QIAGENのRNeasy mini Kit Plusを用いてTotal RNAを抽出し、それらpseudogeneの発現強度をRT-PCRで評価し比較検討する。また、論文投稿に際し、実験の再現性を確認し必要であればn数を増やしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度に論文投稿を控えているため、その追加実験や再現性の確認などに少し余裕を持たせている。特に、アイソトープの購入に金額を要するためその分も計上する予定である。実験自体は順調にきているため、問題ないと考えている。
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