2019 Fiscal Year Research-status Report
ヘリコバクター・シネディの治療方針の策定および病原性解明に関する研究
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18K15152
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
中島 純子 (富田純子) 愛知学院大学, 薬学部, 講師 (10454323)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 薬剤感受性試験 / 薬剤耐性 / 薬剤排出システム / VI型分泌装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘリコバクター・シネディ臨床分離株100株以上について、改良レビンタール培地を用いた微量液体希釈法によりMICを測定した。抗菌薬は各系統18薬剤について評価した。また、16S rRNAの塩基配列およびGyrA、薬剤排出ポンプ、ペニシリン結合タンパク質のアミノ酸配列を決定し比較した。 16S rRNA塩基配列のAGA926-928の変異を調べると、2塩基変異保有菌株はテトラサイクリンに対し、比較的高いMICを示した。キノロン系薬剤に耐性を示した日本分離株は、GyrAアミノ酸配列のThr-84またはAsp-88に変異が見られた。Thr-84およびAsp-88の両方に変異がある菌株はキノロン系薬剤に高度耐性を示す傾向があった。キノロン系薬剤耐性株の多くは、薬剤排出ポンプにも変異を有しており、アミノ酸配列を比較するとMATE型およびRND型薬剤排出ポンプにおける合計24の変異のうち、キノロン耐性に関与すると予想される11の変異を見出した。ペニシリン系、セフェム系抗菌薬は臨床現場での使用報告が多い抗菌薬であるが、MIC値としてはやや高い値であり、これらの薬剤耐性化にも排出ポンプが関与していると考えられる。本菌種の耐性化機構を理解することは、感染対策にも有効であり、再発メカニズム解明につながると予想される。 また、ヘリコバクター・シネディが保有している機能未知のVI型分泌装置(T6SS)について、遺伝子欠損株を作製した。今後、遺伝子欠損株の評価を行う予定である。T6SSの機能およびエフェクター分子については、全く解明されていないため、ヘリコバクター・シネディの生態解明につながると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年8月から2020年3月まで産前産後休暇および育児休暇を取得したため、研究計画からやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ヘリコバクター・シネディの薬剤排出システム欠損株を作製し、薬剤排出システムの耐性化への寄与度を明確にする。また、特異的遺伝子群の解析では、VI型分泌装置の遺伝子欠損株を用いて、この分泌装置の機能とエフェクターの存在を明らかにしていく予定である
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Causes of Carryover |
産前産後休暇および育児休暇を取得したため、研究の実施が計画からやや遅れ、次年度使用額が生じた。次年度は遺伝子工学用試薬やマウス飼育用品、細胞培養用試薬等の購入に使用する予定である。
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