2021 Fiscal Year Research-status Report
肺線維症患者の真菌マイクロバイオーム解析と真菌が上皮間葉転換に与える影響の検討
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18K15154
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
串間 尚子 福岡大学, 医学部, 講師 (90642497)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肺胞上皮 / 線維芽細胞 / アスペルギルス / アポトーシス / 細胞増殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
アスペルギルスは、肺線維症を含む慢性呼吸器疾患患者の呼吸器検体からしばしば検出される。肺線維症におけるアスペルギルス定着の役割を明らかにするため、ヒト肺上皮 A549 細胞またはマウス線維芽細胞 NIH/3T3 細胞にアスペルギルス分生子を加え、肺微小環境を模したものとして以下の実験を行った。 Aspergillus fumigatus (AF) 293 の分生子を、エフェクター・標的細胞比率1:10、 1:100 に調整し、二次元 (2D) および三次元(3D)浮遊培養したA549、NIH/3T3細胞と接触させ、RNA シーケンス、ウエスタンブロットを施行した。 AF293の分生子は、2Dおよび3DF培養においてA549細胞の増殖を抑制し、3D培養においてはアポトーシスを誘導した。RNA シーケンスでは、MX dymamin-like GTPase 1 (MX1) を含むインターフェロンを介した抗ウイルス反応に関連する遺伝子の発現が増強していた。一方、AF293の比率が高いと細胞周期に関連する遺伝子の発現が減少していた。WBでは、上皮間葉転換は関与していないことを確認した。また、NIH/3T3に関しては3D培養においてその増殖が促進されたが、アポトーシス反応は誘導されなかった。RNAシーケンスの結果、MX2 を含むインターフェロンシグナルに関連する遺伝子の発現が増加したが、細胞周期に関連する遺伝子の発現の減少は観察されなかった。 AFは、上皮細胞のアポトーシスと線維芽細胞の増殖の両方に影響を及ぼす。上皮細胞や線維芽細胞におけるアスペルギルスを介したシグナル伝達経路の詳細なメカニズムを理解することは、肺線維症を含む慢性呼吸器疾患患者の病態形成の理解の一助となる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載した内容を論文化し、海外雑誌に受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、高濃度のAF293分生子は、MX1などのIFN誘導性遺伝子とともに、A549のアポトーシスを誘導することが示された。さらにAF293の分生子は、MX2誘導などのIFNシグナル伝達を介して、NIH/3T3の増殖を増加させるものと想定された。これらの結果から、アスペルギルスが定着している慢性呼吸器疾患患者の気道・肺では、MXタンパクが何らかの役割を果たしているが、AF293分生子に対するこれら2種類の細胞の異なる反応が肺線維症の発症に関与しているかどうかは依然として不明である。今後、より詳細な解析を行いAF293分生子の時空間的な制御機構を明らかにし、肺線維化とAspergillus属菌の関連性を解明する。
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Causes of Carryover |
国際学会で現地発表を予定していたが、WEB開催となったため使用予定であった旅費等の差額が生じた。今年度、国際学会旅費として使用予定である。
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