コリスチン耐性菌の新規抗菌治療

2020 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K15158
• Research Institution: National Institute of Infectious Diseases
• Principal Investigator: 平林 亜希 国立感染症研究所, 薬剤耐性研究センター, 研究員 (00801911)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: コリスチン / mcr / 外膜タンパク質

Outline of Annual Research Achievements

コリスチンは多剤耐性グラム陰性桿菌に対して用いられる抗菌薬であるが、伝達性プラスミドを介したコリスチン耐性遺伝子mcrの拡散が世界各地で報告されており、新たな対策が急務である。MCRはコリスチンの標的であるLPSのリピドAにホスホエタノールアミンを修飾し、外膜の陰性荷電を減少させ、耐性に寄与する。本研究ではコリスチン耐性菌への新たな治療法の開発を目的とし、低用量コリスチンの抗菌作用を増強する既存の承認薬の探索と併用効果の機序の解明を行う。
令和2年度は、FDA承認薬を含む780種類のライブラリーから選出したコリスチンとの併用効果を認めた20種類の承認薬曝露により得られた変異株を用いた解析を行った。変異株の解析にて標的部位の候補を選択し、それらの変異を含んだ標的タンパクのDNAをクローニングした大腸菌株を作成した。これらの株を用いて併用効果の再構築実験を行ったところ、候補となるタンパクが承認薬の標的であることを示唆する所見が得られた。現在、これらの標的タンパクの精製を進めており、さらなる機序の解明を行っている。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

令和2年度は、新型コロナウイルスの流行の影響で、共同研究の動物実験を予定通り進めることが困難であり、1年間延期する予定となった。実現可能な実験計画を検討中である。

Strategy for Future Research Activity

今後は以下の実験を計画している。
1)臨床分離株を用いた承認薬の検討
国内外の家畜やヒトから分離されたmcr 陽性グラム陰性菌を用いて承認薬の検討を行う。
2)マウス経鼻感染モデルを用いた解析
コリスチン耐性菌をマウスに経鼻感染して呼吸器感染モデルを作成する。低用量コリスチンと承認薬との併用効果を、マウスの生存率および肺内生菌数より判定し、in vivo で解析する。

Causes of Carryover

令和2年度は、新型コロナウイルスの流行の影響で、各種学会への参加が困難になったこと、また共同研究の動物実験を予定通り進めることが困難であり延期の予定となったため、次年度使用額が生じることとなった。