2018 Fiscal Year Research-status Report
SOCS1アンタゴニストを搭載した新規BCGワクチンの開発
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18K15162
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
神沼 智裕 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 免疫老化プロジェクト, プロジェクト研究員 (30794044)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 結核 / BCG / カニクイザル / マクロファージ / 感染症 / 免疫学 / SOCS1 |
Outline of Annual Research Achievements |
結核は世界中で100万人以上の死者が出ている。現行のBCGワクチンでは成人の肺結核に対する明確な予防効果は認められていない。以上の背景より、新規結核予防ワクチンの開発は急務である。そこで本研究は、BCGなど抗酸菌の宿主免疫反応を負に調節するサイトカイン抑制分子(SOCS)に着目し、SOCS1のアンタゴニストとして働くSOCS1変異体(SOCS1DN)を用いて、現行のBCGワクチンよりも有効な新規BCGワクチン開発の基盤づくりを目指す。申請者のグループは、マウスSOCS1DNを現行のBCGワクチン株へ組み込んだBCG-mSOCS1DNを作製している。さらに、マウスを用いた検討において、新規BCGワクチンの効果が有用であることを見出している。そこで、本研究ではヒト結核モデルであるカニクイザルを用いて、新規BCGワクチン開発の基盤づくりを目的とする。 2018年度では、まず始めにカニクイザル末梢血単核球(PBMC)を用いて、カニクイザルSOCS1発現プラスミドの作製、SOCS1にアミノ酸変異を入れたカニクイザルSOCS1DNを作製した。細胞株を用いた実験より、SOCS1DNを発現させることでJAK-STAT経路の活性化の増強を認めた。次に、SOCS1DN発現プラスミドをBCGに遺伝子導入してBCG-cynoSOCS1DNを作製し、感染による自然免疫反応を評価した。具体的には、カニクイザルPBMCよりCD14+細胞を分取し、M-CSF刺激することで、マクロファージへ分化誘導させた。この細胞を用いて、現行BCGワクチン株またはBCG-cynoSOCS1DN感染後のサイトカイン産生量を比較検討した。その結果、BCG-cynoSOCS1DNは現行BCGワクチン株よりも炎症性サイトカインの産生量が有意に減少していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は当初の計画通り、カニクイザルSOCS1DNの機能がin vitro実験系にて保持されていることが確認された。また、BCG-cynoSOCS1DNの作製を行い、新規BCGワクチン株として作製に成功した。作製した新規BCGワクチン株感染後の自然免疫反応としてサイトカイン産生量を検討したところ、新規BCGワクチン株は現行BCGワクチン株と比較して炎症性サイトカインの産生量が減少することを明らかにした。総合的には概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、BCG-cynoSOCS1DNをマクロファージに感染させた後、SOCS1DNの機能がマクロファージ細胞内で作用しているかを検証する。さらに、カニクイザルを用いて、BCG-cynoSOCS1DNならびに現行BCGワクチン株の接種を行う。接種後は接種部位の炎症反応の観察を行い、副反応の有無を評価する。そして、抗原特異的な免疫反応の検証を行い、現行BCGワクチンと比較して新規BCGワクチンのワクチン効果を評価していく予定である。
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Research Products
(3 results)