2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K15164
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小柳 直人 東京大学, 医科学研究所, 助教 (90738121)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | HSV / 免疫回避 / NK細胞 / NKG2Dリガンド |
Outline of Annual Research Achievements |
HSVはヒトに口唇ヘルペス、性器ヘルペス、皮膚疾患、眼疾患、脳炎、新生児ヘルペスなど多様な病態を引き起こす、医学的に非常に重要なウイルスである。宿主に感染したHSVは終生潜伏感染し、宿主がストレス状態や免疫抑制状態、強い紫外線を受けるなど内的・外的刺激を受けた際に再活性化し、回帰発症する。HSVによる回帰発症が何度も繰り返される原因の一つとして、HSVが多様な宿主免疫回避機構を獲得していることが考えられる。HSV感染細胞では細胞障害性T細胞 (CTL)にウイルス抗原を提示するMHCクラスIの細胞表面量が抑制される。これまでに、HSV因子Us3がMHCクラスIの細胞表面量を抑制し、CTLからの傷害回避を司ることが明らかになっている。一方で、NK細胞はHSV感染細胞のようにMHCクラスIの細胞表面量が減少した細胞を異常な細胞と認識し、排除する。そのため、生体内における効率的なウイルス増殖を果たすためにはHSVがNK細胞回避機構も獲得していることが示唆されるが、生体レベルにおいてNK細胞からの傷害回避を司るHSV因子は未だ不明である。 NK細胞からの傷害回避を司るHSV因子を同定し、そのメカニズムを明らかにするために、平成30年度はNK細胞の活性化レセプターNKG2Dのリガンドに着目した解析を実施した。まず、HSV遺伝子発現プラスミドを用いて、NKG2Dリガンドの細胞表面量が減少するHSV因子を網羅的に同定した。同定したウイルス因子の一つに関して、欠損変異ウイルスを作製した。野生体ウイルス感染細胞ではNKG2Dリガンドの細胞表面量が減少するが、この欠損変異ウイルスではNKG2Dリガンドの細胞表面量を効率的に抑制できないことが示唆された。これらの結果から、このウイルス因子はNKG2Dリガンドの細胞表面量抑制に寄与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の計画通りに以下の解析を実施し、HSVの新規免疫回避因子候補の同定に至った。 (i) EGFPを融合したNKG2Dリガンドを安定発現する細胞に構築済みの約80種類のHSV遺伝子発現プラスミドを導入し、NKG2Dリガンド細胞表面量が減少するHSV因子を網羅的に同定した。 (ii) (i)で同定したHSV因子を発現するプラスミドを培養細胞に導入し、内在のNKG2Dリガンドの細胞表面量が減少するか検討した。 (iii) HSVゲノム編集法を用いて、上記の候補HSV因子を欠損させた組換えHSVを作製し、感染細胞におけるNKG2Dリガンドの細胞表面量に与える影響を解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、申請時の計画通りに以下の解析を実施し、 HSVの新規免疫回避機構の解明を試みる。 (i) HSV候補因子欠損ウイルス感染細胞とヒトNK細胞を共培養し、NK細胞による細胞障害活性を測定し、HSV候補因子のNK細胞障害回避能を解析する。 (ii) HSV候補因子によるNK細胞障害回避メカニズムを解析する。 (iii) 同定したHSV候補因子がマウスNKG2Dリガンドの細胞表面量も抑制するか解析する。 (iv) (iii)において、マウスNKG2Dリガンドの細胞表面量も制御しうることが認められたHSV因子については、マウス病態モデルに供する。抗NK1.1抗体投与によるNK細胞depletionマウスにおける変異ウイルスの増殖や病原性を解析し、同定したHSV因子が個体レベルにおいてNK細胞回避に関与しているかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
(理由)これまでに、HSV感染細胞においてヒトNKG2Dリガンドの細胞表面量が減少することが報告されていた。そのため、それらの解析で用いられている培養細胞株を本研究課題でも用いてNKG2Dリガンドの細胞表面量の抑制に寄与するHSV因子のスクリーニングを実施し、複数の候補を同定した。しかし、これらの培養細胞株ではHSV感染時のNKG2Dリガンドの細胞表面量抑制が過去の報告で示唆されるほどには抑制されないという結果が得られた。そこで、新たに複数の培養細胞株を用いて条件検討を行う必要が生じた。そのため、本年度に実施予定であった解析の一部を来年度に実施することとした。 (使用計画)本年度に得られたHSV候補因子に関して、NKG2Dリガンドの細胞表面量抑制機構および生体レベルでの意義を解析する。これらの実験の実施にあたり、一般試薬、培養試薬、牛胎児血清、プラスチック器具、抗体、マウス等の購入費が必要である。
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Research Products
(14 results)