2018 Fiscal Year Research-status Report
高病原性コウモリ由来レオウイルスにおけるヒトへの感染性獲得機構の解明
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18K15167
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川岸 崇裕 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員(常勤) (90800029)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レオウイルス / 細胞侵入 / リバースジェネティクス / コウモリ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、重篤な急性呼吸器症状を示した患者からコウモリを自然宿主とするネルソンベイオルソレオウイルス(NBV)が分離され、NBVとヒト疾患との関連が指摘されている。本研究では、NBVコウモリ分離株とヒト分離株間で最もアミノ酸の相同性が低い、セルアタッチメントタンパク質σCに着目した。コウモリ分離株およびヒト分離株間でのσCの違いが細胞侵入に与える影響を明らかにし、σC受容体を同定することでNBVのヒトへの感染性獲得機構を明らかにすることを目的とした。今年度は以下に示す成果が得られた。 1.ウイルス側因子の探索 ヒト由来MB株のリバースジェネティクス法を用いて、コウモリ由来NelB株σCを発現するキメラウイルス(NelB-σC)を作製し性状を解析した。その結果、NelB-σCは培養細胞での感染性、マウスモデルでの病原性が低下していた。また、MB株σC内に様々な変異を加えた組換えウイルスを作製し、感染性が低下する変異体を探索した結果、σC BodyドメインがMB株の効率的な感染に重要であることが明らかとなった。同定したBodyドメイン内のアミノ酸の重要性を調べるため、NelB-σCのBodyドメイン内にヒト由来MB株タイプのアミノ酸を導入したウイルスを作製し、感染性、病原性を解析した。その結果、作製したウイルスはヒト由来MB株と同様に効率的な感染性を示し、マウスにおいても高い病原性を示した。以上の結果は、σC Bodyドメイン内の変異がNBVの効率的な感染性、病原性に重要であることを示唆している。 2.宿主因子の探索 私達はこれまでにヒト由来MB株がσC依存的にA549細胞に感染することを明らかにしている。Cas9を恒常的に発現するA549細胞を樹立し、CRISPRを用いてノックアウトスクリーニングを行ない、σC受容体の候補因子を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、NBVヒト分離株による効率的な細胞侵入に重要なウイルス側因子および宿主側因子を明らかにすることを目的とした。ウイルス側因子については、当初の予定通り、ヒト分離株とコウモリ分離株のσCのアミノ酸を比較し、キメラウイルスを作製することでヒト分離株の効率的な感染性、病原性に重要なドメインを明らかにした。宿主側因子については、CRISPRスクリーニングを行い、σC受容体の候補因子を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画として、ウイルス側因子については、σC Bodyドメイン内の変異の意義を解析する予定である。具体的には、ヒト分離株由来σCおよびコウモリ分離株由来σCの安定性、細胞表面への吸着能を比較する。また、宿主因子については得られたσC受容体候補因子のノックアウト細胞株を樹立し、MB株への感染性を調べることで2次スクリーニングを行う。
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Research Products
(8 results)