2020 Fiscal Year Research-status Report
ウイルス感染における糖鎖リモデリングの意義解明に向けた技術基盤の構築
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18K15176
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
日尾野 隆大 北海道大学, 獣医学研究院, 講師 (00775819)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ウイルス糖タンパク質 / 糖鎖 / グライコフォーム / グライコプロテオミクス / レクチンマイクロアレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
COVID-19の発生及びSARS-CoV-2の出現に伴って、緊急的に実験計画を変更し、SARS-CoV-2のSタンパク質に付加する糖鎖の解析に取り組んだ。昨年度までにA型インフルエンザウイルスを用いて確立した技術を水平展開できること、系統的にも大きく異なり、ま生活環も異なるウイルス間での糖鎖付加を比較解析することでウイルスと宿主の間で生じるGlycosylationをめぐる攻防について理解が深まることを踏まえると、本計画変更は、当初目的達成の観点からも妥当である。また、SARS-CoV-2に付加する糖鎖の解析は、新規ワクチン開発の観点からも社会的なニーズが高い。糖鎖の解析にはこれまでウイルスの糖鎖解析に用いてきたレクチンアレイ法に加えて、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)を組み合わせて、SARS-CoV-2のSタンパク質に付加する糖鎖を分析した。その結果、両法を組み合わせることで高精度な部位特異的糖鎖情報を得ることに成功した。より具体的には、Sタンパク質に存在する22箇所のN型糖鎖の予想付加部位には、どれも非常に高い頻度で糖鎖が付加していることがわかった。さらに付加するN型糖鎖の構造については、末端において非常に高度なフコシル化が生じていることがわかった。レクチンアレイ解析の結果、これら末端におけるフコシル化はルイス型であることが予想されている。本成果については論文としてまとめ、既にプレプリントサーバーで公開している。現在査読誌への投稿に向けて準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画の変更はあったものの、SARS-CoV-2のSタンパク質に付加する糖鎖について、高精度な部位特異的糖鎖情報の取得に成功するとともに、その情報をプレプリントサーバーに公開するなど、高い成果を上げることができた。したがって、研究成果としては当初計画以上の進展が見られたと評価しているが、COVID-19の影響により、学会等での成果発信を十分にすることができなかった。そのため区分としては(2)概ね順調に進展している、を選択し、成果発信のために期間延長を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度COVID-19の影響で行うことができなかった成果の発信を行う。一方で、当初計画の最終年度には成果発表のための国際学会参加旅費を積算していたが、現在のCOVID-19の流行状況を踏まえると、今年度も国際学会参加は不可能であるあると考える。したがって、当初旅費として積算していた予算の一部は、SARS-CoV-2の糖鎖解析にもちいる消耗品として支出する予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画最終年度である令和2年度には国際学会や国内学会での成果発表を予定していたが、COVID-19の影響で、国際学会への参加は不可能になり、国内学会も多くがweb開催へ振り返られた。そのため当初計上していた旅費の執行ができなかった。これら旅費は令和3年度に執行するとともに、一部については、令和2年度に得られたSARS-CoV-2の糖鎖解析についての成果をさらに発展させるための消耗品費として執行する予定である。
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