2018 Fiscal Year Research-status Report
炎症性マクロファージ表面に誘導されるカルレティキュリンが持つ自己防衛効果の解析
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18K15199
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
林 嘉宏 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (30802590)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 血球貪食症候群 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
血球貪食性リンパ組織球症(Hemophagocytic lymphohistiocytosis、HLH)は、遺伝的背景あるいは多彩な基礎疾患をベースとして発症し、過度の炎症性免疫の亢進から多臓器不全に至る致死率の高い症候群である。本研究は、HLHの病態に共通するマクロファージの炎症性極性変化(Haematologica 2017)とマクロファージ細胞表面に発現する“パーフォリン阻害因子”カルレティキュリンに着目し、活性化されたマクロファージが、生体に備わっているNK細胞やT細胞の細胞傷害顆粒(パーフォリン)を介した炎症沈静化機構から逃れて拡大していくプロセスの解明を目指すものである。 研究代表者らの先行研究で、HLH病態発症におけるHIF1Aの重症性、マクロファージでのHIF1A高発現が炎症性マクロファージへの極性変化をもたらすことがわかっている。また、その後の検討結果から、血球細胞におけるHIF1Aタンパクの高発現により炎症性タイプに極性変化したマクロファージの細胞表面にカルレティキュリンの発現が誘導される結果を得ていた。マクロファージの極性変化と細胞表面へのカルレティキュリン発現誘導の関係性を明確にすることが、本年度の目標であった。HLHマウスへのHIF1A阻害剤やNOS2阻害剤の投与によるマクロファージ極性変化抑制効果は今のところ見られておらず、最適な投与量、投与スケジュールの検討が引き続き必要である。一方、非炎症性M2マクロファージ誘導に中心的な役割を担うMycを欠損させたマウスを用いて解析を行ったところ、骨髄中マクロファージの炎症性サブタイプへの誘導が促進された。この炎症性マクロファージ細胞表面にはカルレティキュリンの発現が誘導されており、マクロファージの炎症性サブタイプへの極性変化と細胞表面へのカルレティキュリン発現誘導の関連性を強く支持する結果と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マクロファージの極性変化と細胞表面へのカルレティキュリン発現誘導の関係性を明確にすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、引き続き阻害剤投与プロトコールの最適化を模索する。薬物的阻害による炎症性マクロファージへの極性変化ブロックが十分に達成できない可能性も考慮し、HIF1AノックアウトマウスやNOS2ノックアウトマウスを用いた解析を検討している。また、今年度は進められなかったマクロファージ細胞表面に発現するカルレティキュリンによるHLH病態進行阻害効果の検証も随時行っていく。
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Causes of Carryover |
当該年度は、当初予定していた薬物による炎症性マクロファージ極性変化阻害効果が十分に得られなかったことから、実験系やモデルの確立、薬物投与プロトコール最適化のための条件検討に時間を割いた。マクロファージ細胞表面に発現するカルレティキュリンによるHLH病態進行阻害効果の検証等の実験を次年度に持ち越すこととなったため、残額が生じた。新年度の配分額と合算し、使用する。
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