2018 Fiscal Year Research-status Report
悪性黒色腫におけるメラニン合成系を介した免疫寛容誘導機序の解析
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18K15204
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
日高 高徳 東北大学, 大学病院, 医員 (80781575)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 悪性黒色腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年臨床において悪性黒色腫による周囲の免疫細胞に対する免疫抑制が,同腫瘍の病態に重要であることが示された。本研究では抗腫瘍免疫の抑制に重要な転写因子とされるAryl hydrocarbon receptor (AhR)と悪性黒色腫に特異的に認められるメラニン合成系の抗腫瘍免疫への関与について検討した。 今年度はまずヒト悪性黒色腫検体における検討を実施した。公開されている色素性母斑(23例)と悪性黒色腫(57例)のRNAseqデータを用いてパスウェイ解析を行ったところ、メラニン合成系とAhR標的遺伝子のアノテーション間に強い相関が認められた。次に、同相関の確認と抗腫瘍免疫抑制機序との関係を調べるため、悪性黒色腫の手術検体を用いて免疫組織化学染色を実施した。結果、メラニン合成酵素であるTyrosinaseとAhRの標的分子であるCYP1A1の発現に正の相関を認めた。加えて、両者が高発現している部位の周囲に、CYP1A1とIL-10を発現しているCD163陽性マクロファージとCYP1A1とPD-1を発現しているCD8陽性T細胞の浸潤を認めた。これらの結果は、メラニン合成系と関連した分泌性のAhR活性化因子の存在と、同因子によるAhR活性化を介した抗腫瘍免疫の抑制機序の存在を示唆している。そこで、種々のメラニン代謝産物をヒトT細胞株に添加し、AhR活性化能をCYP1A1の発現を指標に評価したところ、一部の中間代謝物でCYP1A1の発現を認めた。今後はマウスを用いて、同メラニン代謝産物による免疫抑制能を評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト悪性黒色腫病変におけるメラニン合成系およびAhR系の活性化と、抗腫瘍免疫抑制能の解析は順調に進捗している。今後同機序を、AhRがT細胞で特異的に欠失したAhR fl/fl::Lck-CreマウスとAhR fl/flマウスに悪性黒色腫細胞株を移植するモデルを用いて検討予定であるが、同遺伝子系のマウスの交配が当初の計画からやや遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
目的とする遺伝子系(AhR fl/fl::Lck-CreマウスおよびAhR fl/flマウス)を有する遺伝子改変マウスを用いて、悪性黒色腫細胞株の移植実験を実施する。移植後、腫瘍巣に浸潤したT細胞を単離し、免疫学的プロファイルを解析することで、AhRの活性化が抗腫瘍免疫抑制に与える影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
遺伝子改変マウスの交配の遅延により、マウスを用いた実験系に使用する備品類の購入が遅延している。加えて、マウスを用いた実験系の結果が出た時点で、学会等において成果発表を実施予定であったが、遅延により旅費の使用がなかった。翌年度は遅延した部分の実験を完了する予定であり、それに伴い本年度に余剰となった助成金を備品の購入と旅費として使用させていただく予定である。
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