2018 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム核内空間配置の変換による組織特異的発がん機構の解明
Project/Area Number |
18K15210
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 謙治 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (20757504)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 核内構造 / 遺伝子変異 / がん / 発がんモデル / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんは遺伝子変異を基盤とした病気であるが、近年発がん過程におけるエピゲノムの重要性が注目されている。ゲノム核内空間配置の変化はDNAメチル化やヒストン修飾と関連した高次なエピゲノム機構として近年その重要性が明らかにされつつあるが、発がん過程におけるゲノム核内空間配置の重要性はほとんど明らかになっていない。そこで本研究課題では、発がんと同時に癌遺伝子誘発性細胞老化 (Oncogene Induced Senescence; OIS) を誘導可能なマウスモデルを作製して発がんが回避された時に、ゲノム核内空間配置がどのように変化するのかを調べる。最終的には、その変化をDNAのメチル化状態や遺伝子変異と関連させることで、がんの組織特異性におけるゲノム核内空間配置の重要性を明らかにするということを目的としている。申請者は昨年度までに、全身でがん遺伝子の発現を誘導可能な明細胞肉腫モデルマウスを樹立し、①がんが出来ない組織ではOISが起こっていること、一方で、②がんが出来る組織ではOISの回避が起こっていることを明らかにしてきた。さらに、組織特異的な転写因子が形成するクロマチン構造の変化がその変化の背景にあるメカニズムであることを明らかにした(論文投稿中)。今年度は、この明細胞肉腫モデルや、所属研究室で既に樹立されている他のマウスモデルのES細胞に核ラミナのコンディショナルKOアリルを導入し、組織特異的にOIS を誘導できるかどうかを検証している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに、全身でがん遺伝子の発現を誘導可能な明細胞肉腫モデルマウスを樹立し、そのマウスモデル由来の腫瘍からiPS細胞を樹立した。その腫瘍由来iPS細胞をマウスの胚盤胞へインジェクションし、全身でがん遺伝子の発現を誘導可能なキメラマウスを作製し、プライマリーの明細胞肉腫モデルマウスにおいて腫瘍が形成される領域ではOISのエスケープが起こっていることを確認できた。現在はこの明細胞肉腫モデルのES細胞に核ラミナのコンディショナルKOアリルを導入し、組織特異的にOIS を誘導できるかどうかを検証している。また、所属研究室で既に樹立されている他のマウスモデル(家族性大腸腺腫瘍、肺がん、膵癌)に対象を広げ、これらのマウスモデルのES細胞に核ラミナのコンディショナルKOアリルを導入することを試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は昨年度に引き続きマウス発がんモデルのES細胞にOIS誘導アリルを導入し、このES細胞からマウスを作製することを試みる。そのマウスを用いて、発がんと同時にOISを誘導して発がんが回避された際は、ゲノム核内空間配置を含め、エピゲノム状態がどのように変化するのかを調べる。またエクソーム解析を行い、OISでゲノム核内空間配置の変換を誘導した腫瘍の原発部位の組織で特異的な遺伝子変異に注目し、発がんに抑制的に働くパッセンジャー変異の同定にも着手する。
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Causes of Carryover |
前年度に計画していた大規模解析を次年度に行うことにしたため、前年度の予算の一部を次年度にまわした。
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Research Products
(2 results)