2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K15211
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大谷 淳二 神戸大学, 医学研究科, 助教 (10770878)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Hippo経路 / 核小体ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
リボソーム生合成の異常を引き金に、核小体からRPL11などのリボソーム蛋白質が核質に放出され、MDM2の機能を抑制、p53蛋白質を安定化し、細胞増殖を抑制する、核小体ストレス経路が明らかになり注目されている。一方で、リボソーム蛋白質遺伝子の異常によるリボソーム病の患者群ではがんのリスクが顕著に上昇すること、がん細胞においてリボソーム蛋白質遺伝子の変異および片アレル欠失が多く見つかることからは、核小体ストレスが、異常な細胞増殖、がん化を亢進する可能性を示唆しているが、その背景となる分子機構はわかっていない。申請者らは準備実験から、リボソーマルRNAの転写阻害剤により、がんの発症や進展に促進的に作動する転写共役因子YAP1/TAZの活性が上昇することを見出しており、これが、核小体ストレスのがん促進的な側面を説明する可能性を検討している。 本年度は、リボソーマルRNAの転写阻害剤を用いた核小体ストレスの誘導によるYAP1/TAZ活性化を観察する最適条件の検討を行ったが、YAP1/TAZ活性の応答が不安定であり、安定的に応答の見られる条件が設定できておらず、追加の検討が必要となっている。また、並行して進めていたsiRNAライブラリーを用いたYAP1/TAZ制御因子のスクリーニングから、リボソーム蛋白質のノックダウンによりYAP1/TAZ活性が上昇する可能性が示唆されたため、この遺伝子のノックダウンによる核小体ストレスの誘導およびYAP1/TAZ活性への影響の検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
核小体ストレスの誘導によるYAP1/TAZ活性の変化を、安定して観察できる実験系を組むことができておらず、その分子機構に踏み込む研究を進められていない。この原因としては、核小体ストレス、およびその応答経路に、細胞増殖抑制的な側面と、促進的な側面があるためではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
核小体ストレスの誘導によるYAP1/TAZ活性の変化を、安定して観察できる実験条件を探索し、分子機構の理解へ繋げる。また、核小体ストレス応答経路に関する理解を進める研究も並行して進め、細胞増殖に対する、促進的および抑制的な、二面的な応答の理解に繋げたいと考えている。
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Causes of Carryover |
所属研究室の余剰試薬等を譲り受けたことから、当初の予定より、必要な試薬等の購入にかかる費用が安価で済んだため、繰越金額が生じた。 次年度使用額は主に質量分析の依頼測定及び消耗品購入に充てる予定である。
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