2019 Fiscal Year Research-status Report
悪性中皮腫の発生・悪性化・中皮細胞の上皮間葉転換にかかわる新規遺伝子の同定
Project/Area Number |
18K15231
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
奥田 真帆 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 博士研究員 (50803441)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 悪性中皮腫 / CRISPR/Cas9スクリーニング / アノイキス / 足場非依存的増殖能 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性中皮腫はアスベスト曝露によって発症する中皮細胞由来の腫瘍で、3種類の主要な組織型が存在する (上皮型、肉腫型、二相型)。最も悪性度の高い肉腫型の形成には、上皮間葉転換関連の遺伝子が大きく関与していることが示唆されている。本研究では、ゲノム編集技術CRISPR/Cas9を用いた網羅的遺伝子ノックアウトスクリーニングによって、中皮細胞のがん化・悪性化や、または上皮間葉転換に関わる新規遺伝子の探索を行い、中皮細胞がん化に必要な因子や悪性中皮腫の組織型を規定する分子を解明することを目的とする。 昨年度作製した、不死化正常中皮細胞株 (HOMC株) のCas9安定発現株に対して、プール化されたヒトゲノムワイドsgRNA ライブラリーを搭載したレンチウイルスを感染させ、網羅的遺伝子ノックアウト細胞群を作製した。 足場非依存的増殖能の獲得は、細胞ががん化に伴い獲得するがん形質の一つである。HOMC株を浮遊培養すると、ほとんどの細胞が死滅する。これに対してHOMC株に転写因子YAPの活性型変異体を発現させた「がん化モデル細胞」は浮遊条件で増殖が可能となった。足場非依存的増殖能の獲得に関与する遺伝子をさらに探索するために、上記の遺伝子ノックアウト細胞群について浮遊培養アッセイを行い、生存細胞をスクリーニングした。現在はこれらの細胞からゲノムDNAを精製し、挿入されているsgRNA配列を解析している。今後は同定した候補遺伝子の機能や悪性中皮腫発症との関連を解析していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、正常不死化中皮細胞 (HOMC株) を用いて作製した網羅的遺伝子ノックアウト細胞群に対して2種類のスクリーニングを行い、がん形質の獲得に関与する遺伝子の同定および機能解析を行う。 (1) 上皮間葉転換を起こした細胞のスクリーニング 上皮間葉転換を起こして高い細胞遊走を獲得した細胞を、ボイデンチャンバーを用いた細胞遊走アッセイにより分離する。本スクリーニングは昨年度より継続して行なった。 (2) 足場非依存的増殖能を獲得した細胞のスクリーニング このスクリーニングでは細胞を浮遊培養し、生存・増殖を続けた細胞を選別する。本年度は浮遊培養スクリーニングを実施し、回収した細胞のゲノムDNAに挿入されているsgRNA配列の解析をほぼ完了しており、概ね計画通りに進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
スクリーニングで得られた細胞のゲノム解析を通して、上皮間葉転換または足場非依存的増殖能の獲得に関与する候補遺伝子を同定する。これらの候補遺伝子についてその機能やシグナル伝達への関与を解析し、標的のがん形質の獲得、さらには不死化正常中皮細胞のがん化を起こす分子機序を検討する。
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Causes of Carryover |
本年度に実施した浮遊培養スクリーニングでは、当初は超低接着表面6ウェル培養プレートの使用を予定していたが、底面積あたりの価格がより安価な超低接着表面チャンバーに変更したため、差額の約15万円が残った。この未使用額については次年度の細胞培養器具の購入に使用する。また、遺伝子の機能解析のためのプライマーやプラスミドの一部、および使用期限の短いキット等の購入を次年度に先送りしたため、未使用額が生じた。これらについては、次年度に予定していた用途のために使用する。
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Research Products
(2 results)