2019 Fiscal Year Research-status Report
中心体型BRCA1複合体の破綻による組織特異的発がんの分子機序の解明
Project/Area Number |
18K15233
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉野 優樹 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (60755700)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | BRCA1 / RACK1 / 乳がん / 中心体 / PLK1 / Aurora A |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、がん抑制遺伝子であるBRCA1による発がん抑制機序を明らかにするため、我々が同定した新規BRCA1結合分子、RACK1による中心体複製制御機構の解析を行った。中心体は細胞分裂時に紡錘体の形成起点となることで染色体の均等な分配に寄与する。そのため、細胞分裂時に中心体の数が2個より多い場合、多極細胞分裂などの異常細胞分裂を引き起こし、染色体不安定性を惹起する。我々は、BRCA1の欠損やRACK1の過剰発現が乳腺上皮に由来する細胞において特異的に中心体の異常増加を引き起こすことを明らかにしていた。 RACK1の過剰発現が中心体の異常増加を引き起こすメカニズムを解明するため、RACK1を過剰発現した細胞における中心体複製を細胞周期ごとに詳細に観察した。その結果、RACK1を過剰発現した細胞では、本来はM期に生じる中心小体解離が、S期にも生じること(早期中心小体解離)が明らかになった。中心小体解離は中心小体複製のライセンシング機構であるため、RACK1を過剰発現した細胞では早期中心小体解離が生じた後、二回目の中心小体複製が生じてしまい、結果として中心体の異常増加が引き起こされることが明らかになった。 RACK1の過剰発現による早期中心小体解離の分子機序を解析したところ、RACK1を過剰発現する細胞の中心体では、活性化したPLK1が増加していることが明らかになった。PLK1はAurora Aにリン酸化されて活性化することから、これらの分子とRACK1の相互作用を解析したところ、RACK1はPLK1、Aurora Aの双方と結合した。さらに、RACK1はPLK1とAurora Aの相互作用を増強し、Aurora AによるPLK1のリン酸化を促進することが明らかになった。これらから、RACK1はAurora A/PLK1シグナル系の制御を介して中心体複製を制御すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では来年度までかけてRACK1による中心体複製の分子機序を解析する予定であったが、本年度にRACK1の作用標的がAurora A/PLK1シグナル経路であることや、RACK1によるAurora A/PLK1シグナル経路の制御機構などを明らかにすることができ、概ね目標の解析を終えることができている。現在、今年度までの解析結果をまとめた論文を投稿し、Revise作業中である。そのため、2020年度では今年度までの結果を発展させ、BRCA1によるAurora A/PLK1シグナル経路の抑制の分子機構の解析を当初計画よりも早く開始することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
中心体複製制御におけるRACK1の標的がAurora A/PLK1シグナル経路であることが明らかになった。RACK1を過剰発現する細胞にBRCA1を共発現させると、PLK1の活性化と中心体の異常増加を抑制したことから、BRCA1はAurora A/PLK1シグナル経路を抑制すると考えられる。 また、2018年度にBRCA1の中心体内における微小局在を解析し、中心体におけるBRCA1の新たな相互作用分子を明らかにしていた。この中に、PLK1の活性制御に関与する分子が含まれていた。 これらから、今後BRCA1によるAurora A/PLK1シグナル経路の抑制メカニズムの解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度の研究が比較的順調に実施できたため、使用する抗体等の量もやや少なかったため、消耗品費が若干少なく済んだ。次年度に新たに計画している実験で使用する抗体や新たなタンパク質発現ベクターの構築等に当てる予定である。
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