2018 Fiscal Year Research-status Report
がんのヘテロジェナイエティ構築における染色体不安定性の寄与の解明
Project/Area Number |
18K15234
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
家村 顕自 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (50778058)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 染色体不安定性 / がん / 細胞分裂 / ヘテロジェナイティ / 増殖優位性 |
Outline of Annual Research Achievements |
染色体不安定性出現頻度の異なる細胞の細胞の細胞増殖過程を観察したところ、染色体不安定性が高頻度でみられる細胞では分裂期中期の時間が延長しており、細胞の増殖が抑制された。一方で各々の細胞をヌードマウス皮下に移植したところ、染色体不安定性が高頻度でみられる細胞群は、染色体不安定性の発生頻度が低い細胞群に比べて大きな腫瘍を形成することが分かった。このことから、染色体不安定性の細胞増殖に対する寄与は、細胞が増殖する環境によって異なることが示唆された。 そこで次に、生体内の細胞増殖様式を一部模倣するスフェロイド形成培養法にて各々の細胞群を培養すると、染色体不安定性が高頻度にみられる細胞群では通常培養条件下と同様に分裂期中期の時間が延長していたが、染色体不安定性の発生頻度が低い細胞群に比べてより大きな細胞塊を形成することが分かった。そこで、シングルセルゲノムシークエンス解析により各培養条件における各細胞群のコピー数を推定したところ、通常培養条件下においては、染色体不安定性の出現頻度と相関して細胞間の染色体コピー数の変動度合いが上昇していた。一方、スフェロイド形成培養条件下では、細胞間の染色体コピー数の変動が減少することが分かった。 この結果から、染色体不安定性の発生に伴い生じる染色体コピー数のヘテロジェナイティは、培養環境の変化によって生じる増殖選択圧に対して、より耐性をもつ増殖優位性細胞の出現に寄与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次年度の研究遂行に必要となる、染色体不安定性出現頻度の異なる細胞を用いたヌードマウスを用いた移植モデルや増殖能の違いを観察できるスフェロイド形成培養法を確立でききており、各々の実験条件において表現型の変化をみることに成功している。スフェロイド形成培養系を用いることで生体内を一部模倣する状況での細胞表現型の詳細な解析が可能となり、次年度の以降の実験計画を滞りなく遂行できることが予想される。また、正常細胞を用いた同様の実験系の予備検討も同時に進展している。 以上のことから、当初の予定どおり研究がおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
染色体不安定性の発生に伴い生じる細胞のヘテロジェナイティの薬剤抵抗性獲得機構に対する寄与を明らかにするために、染色体不安定性出現頻度の異なる細胞を種々の阻害剤や抗がん剤を添加したスフェロイド形成培養条件下で培養し、得られた細胞塊の増殖過程を観察する。 増殖選択圧に対して耐性を獲得した増殖優位性細胞の造腫瘍性を検証するために、スフェロイド形成培養によって得られた細胞塊をヌードマウスに移植し、腫瘍形成過程を観察する。また、得られた腫瘍における一細胞ゲノム解析を行い、染色体コピー数のヘテロジェナイティを評価する。 加えて、正常細胞株を用いて染色体不安定性出現頻度の異なる細胞を単離する。単離された細胞をスフェロイド形成培養し、一細胞ゲノム解析を行うことにより、環境変化によって生じる増殖選択圧の耐性獲得に必要な染色体領域や染色体コピー数の変動度合いを推定する。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況と照らし合わせ、本年度においては当初計画していたシングルセルゲノムシークエンス解析を一部行わなかったため、収支において余剰が生じた。しかしながら、本年度執り行わなかったシングルセルゲノムシークエンスは、次年度実施する予定であるため、翌年度の助成金の一部として請求した。
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