2018 Fiscal Year Research-status Report
Exploring the transcriptional repressors of VEGFA by in vitro/in vivo high throughput screening
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18K15236
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
村松 智輝 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (90732553)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 血管新生 / VEGFA / 化合物スクリーニング / がん転移 / ニワトリ胚 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん転移は、多段階のステップによって完遂する事象であり、そのメカニズムは徐々に明らかになってきている。しかし、がん転移の解析には生体を用いる必要があるため、十分な解析モデル系が確立されていないのが現状である。特に、マウスを用いた場合、十分な解析数の確保、長期の観察期間、それに伴うコスト等の部分でハイスループットスクリーニングを行うことが困難である。そこで、本研究では低コストで観察期間も短く十分な解析数を確保可能なニワトリ胚を用いたスループットの高い実験系を構築した。 本研究は、血管新生促進因子のVEGFAの発現を抑制する化合物の同定およびその転写機構の解明を目的としている。その方法は、化合物ライブラリーとニワトリ胚を組み合わせた独創的なスクリーニングである。申請者は、400種類の化合物ライブラリーを用いてVEGFAの転写を抑制する化合物を細胞ベースのスクリーニングで抽出した。その結果、VEGFA転写抑制活性が上位の化合物は、ほぼ全てが同一のシグナル経路の阻害剤であった。現在までに、上位に挙がってきた化合物がVEGFAの転写に関与している報告はほとんどなく新規の発見である。これらを新規VEGFA転写抑制候補化合物として抽出し、詳細な解析を行った。定量PCRおよびELISA法を用いて抽出した化合物が、VEGFAの発現を減少させるかを検討したところ通常酸素下および低酸素下においてもVEGFAの発現を抑制した。また、候補化合物を血管内皮細胞に添加すると血管の形成阻害を引き起こすことを明らかにした。現在は、ニワトリ胚と候補化合物を用いた血管新生阻害効果およびがん細胞の浸潤抑制効果の検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年目の研究計画として、VEGFAの転写活性を制御する化合物の同定を目標としていた。実際に、400種類の化合物を搭載したライブラリーを用いて網羅的にVEGFAの転写を抑制する化合物の抽出を行った。抽出した複数の化合物について、通常酸素条件下・低酸素条件下でVEGFAの転写活性を抑制するかどうかの再確認を行うとともにELISAにおいてVEGFAの分泌量に関しても検討を行った。その結果、スクリーニングから抽出した複数の化合物は、確実にVEGFAの発現を抑制することが明らかとなった。一般的にVEGFAは、低酸素下でHIF1Aの転写調節を受けているが、通常酸素条件下においてもこれら候補化合物はVEGFAの発現を抑制することが可能であるため、HIF1Aの制御以外でその転写調節が行われている可能性がある。一方、機能的な検証として血管内皮細胞 (HUVEC)を用いたtube formation assayを行い、血管形成能にどのような影響が起きるかを検討した。抽出したいずれの化合物においても、in vitroにおいてHUVECの血管形成を阻害することが観察された。興味深いことに抽出した化合物は、ほぼ全てが細胞内の同じシグナル経路を抑制する阻害剤であったため、今後、網羅的遺伝子発現解析 (トランスクリプトーム、プロテオーム解析)を施行し、公共のデータ解析ソフトウェア (GSEA, DAVID, STRINGなど)を駆使し、in silico解析を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、スクリーニングから抽出したVEGFA転写阻害候補化合物を用いて詳細な機能解析を行う。 1) ニワトリ胚を用いた血管新生阻害の検討 ニワトリ胚において抽出した候補化合物を用いて血管新生阻害実験を行っている。方法としては、ガラスに候補化合物を塗布し、奨尿膜にガラスを静置した2-3日後に血管新生の評価を行う予定である。 2) がん細胞浸潤抑制効果の検討 複数のがん細胞株を用いてニワトリ胚に移植する最適な細胞株の検討を行っている。条件として血管新生が起こり、がん細胞が遠隔部位に浸潤・転移することが重要である。移植細胞が決定した後、ニワトリ胚において候補化合物の機能解析を行う。 3) マウスにおけるがん治療実験 上記解析結果から強い血管新生阻害作用を持つ化合物を担がんマウスに投与し、腫瘍抑制効果の検討を行う。 4) 候補化合物を用いた網羅的遺伝子発現解析 抽出した候補化合物は、ほぼ全て同一のシグナル経路を阻害するものであった。このことから、それぞれの阻害剤を添加した際の細胞内遺伝子発現の変化を統合的に解析することにより、VEGFAの発現を制御している転写因子の探索を行う。一般的に、低酸素条件下においてVEGFAの発現はHIF1Aによって制御されていることが知られているが、候補化合物は通常酸素下においてもVEGFAの発現を抑制するため、HIF1Aを介さない経路によってVEGFAの発現制御を行っている可能性がある。したがって、網羅的遺伝子発現解析を行うことにより、VEGFAの発現を制御する新規シグナル経路の同定に期待できる。得られた遺伝子発現データは、公共のデータ解析ソフトウェア (GSEA, DAVID, STRINGなど)を用いて、in silico解析を行う。そこで、抽出されたネットワークおよび遺伝子について機能的検証を行う。
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