2019 Fiscal Year Research-status Report
細胞外に局在する細胞内機能性キナーゼによるがん微小環境で果たす役割
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18K15253
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
山田 幸司 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (90570979)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 肝がん / PKCδ / 細胞外分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロテインキナーゼCデルタ (PKCδ)は、セリン・スレオニンキナーゼの一つであり、細胞内情報伝達系を担う分子として特徴付けられている。PKCδはこれまで、細胞増殖や分化、さらに細胞死など多彩な高次生命機能に寄与することがわかっている。一方で、PKCδの機能は、がん形質の観点から見ると、がんを促進する働きと抑制する働き双方の特性を併せ持つことが推察される。それゆえ、肝がんなど一部のがん患者の腫瘍組織においてPKCδの過剰発現が確認されているが、PKCδがどのように腫瘍形成に関わるかについてはほとんど解析が進んでいない。 本研究では、肝がん細胞から細胞内タンパク質が細胞外検出される現象に着目し、その基礎研究と臨床応用研究の観点から解析を行い、肝がん病態における役割を明確にし、臨床応用開発に向けた研究基盤の確立を目指す。肝がん細胞株の培養上清からヘパラン硫酸プロテオグリカン結合ビーズを用いて核移行タンパク質を濃縮したのち、無標識サンプル間比較定量プロテオミクス解析法(2DICAL)で解析した結果、PKCアイソフォームのうち、デルタフォーム(PKCδ)のみが細胞外で同定されることを示す知見を得た。さらに健常者や肝がんハイリスク群患者および肝がん患者を対象とした臨床研究を行なったところ、健常者やハイリスク群患者に比べて血中PKCδ濃度が肝がん患者で高値になるという知見を得た。また細胞外のPKCδが肝がん細胞膜上でヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用することを見出した。具体的なPKCδの受容体としてグリピカン3を同定することにも成功した。このグリピカン3との相互作用は、ERK1/2やSTAT3等の細胞増殖性のシグナル伝達系を活性化させ、細胞増殖を亢進させることを突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PKCδはこれまで細胞内で局在し、機能すると考えられてきた分子であるが、本研究を通して、PKCδが細胞外で機能的に存在していることを示すことができた。特に、PKCδが生きた肝がん細胞から細胞外放出される知見を得ることに成功した。また肝がんに対する特異性が高いだけでなく、細胞外で増殖機構に寄与することも明らかとなり、肝がんの新しい診断・治療への応用可能性が見えてきたから。本研究内容に関しては現在論文投稿に至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにPKCδが細胞外分泌され、肝腫瘍形成に寄与することが分かってきた。一方で、細胞外PKCδがとの相互作用が想定される増殖シグナルに寄与する直接的な受容体の特定には至っていない。そこで今後、その分子の同定と増殖機構関与の詳細な解明を目指す。これにより、細胞外PKCδの増殖因子としての作用機序を明確にする。
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Causes of Carryover |
論文投稿と追加実験にかかる費用
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