2019 Fiscal Year Annual Research Report
がん細胞由来エクソソーム中IDO1関連代謝物のがん免疫逃避機構おける役割の解明
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18K15258
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
田所 弘子 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (10770133)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞外小胞 / 代謝物 / アデノシン / パーフォリン / 免疫抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、がん細胞から放出される細胞外小胞(EV)中に含まれる代謝物を同定し、細胞間コミュニケーションにおけるEV中代謝物の役割の探索を試みた。 細胞内、EV内への影響をメタボローム解析により測定した。メタボローム解析の結果から、EV中には代謝物として、免疫抑制作用が報告されているアデノシンが含まれていた。以降はEV中のアデノシンに着目し検討を行った。 アデノシンの免疫抑制作用は、アデノシン受容体を介して生じる。EV中のアデノシンが細胞膜上にあるアデノシン受容体を介して免疫抑制作用を示すためには、EVが細胞に取り込まれる前にアデノシンを放出する必要がある。そこで、細胞障害性T細胞(CTL)などが放出するパーフォリンに着目した。パーフォリンは膜上に孔形成を行うタンパク質である。パーフォリンのEV膜上に対する影響を、高速原子間力顕微鏡を用いて観察し、パーフォリンよるEVの破壊を確認した。 アデノシンはCTLのパーフォリン分泌を抑制する。パーフォリンによってEVから放出されたアデノシンのCTLのパーフォリン分泌量に対する影響を、ELISA法を用いて測定した。EVを活性化したCTLに加えるとCTL単体に比べパーフォリン分泌量が有意に減少した。またこの減少はアデノシン分解酵素であるアデノシンデアミナーゼを添加することで打ち消された。EV添加によるCTLからのパーフォリン分泌減少には、細胞外アデノシンが関与していることが示され、細胞外アデノシンの増加に対してパーフォリンによるEV破壊によってEV中のアデノシンが放出された影響によるものであることが示唆された。 本研究では、EV中のアデノシンが特定の免疫抑制作用の可能性を見出した。またパーフォリン誘発性のEV破壊によって媒介されるEV媒介細胞間コミュニケーションの新しい形を提唱した。
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