2018 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム編集治療の安全化に向けた修復用DNAのオフターゲット組込みの制御
Project/Area Number |
18K15288
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
新田 洋久 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (60808690)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 遺伝子治療 / ゲノム編集 / 造血幹細胞 / マーモセット / オフターゲット |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝性疾患に対する遺伝子治療を行う場合に外来の正常遺伝子をゲノムに挿入すると、遺伝子発現が挿入部位の影響を受けるとともに、がん遺伝子近傍に挿入された場合にはがんを発症する危険性があった。一方で正常遺伝子を染色体外で発現させる場合には、長期的にみると効果が減弱してしまう。副作用を少なくして治療効果を継続させるためには、変異遺伝子を正常遺伝子に置き換える遺伝子修復治療を実現させる必要がある。近年開発されたゲノム編集技術により、標的配列の正確な改変が現実的に可能となった。本研究では安全性の高い遺伝子修復技術を開発するために、霊長類モデル動物での遺伝子修復治療を行い臨床に応用することを目指す。同時に、遺伝子修復の安全性を改善するために、正常遺伝子配列が標的以外に組み込まれた細胞を除外するための新規技術を開発することを目標とする。 遺伝子修復治療の実現のために、CRISPR-Cas9システムを利用してIL2RG欠損マーモセットの造血幹前駆細胞(CD34陽性細胞)にゲノム編集を行い、欠損部位の相同配列を含むドナーDNAを用いて遺伝子修復を行う。モデルマーモセットに応用するために、ヒト造血幹前駆細胞を用いてIL2RG領域の遺伝子修復技術の検証を行った。ドナーDNAによる相同組み換えが起きた細胞の割合を測定すると、治療に必要な組み換え効率を達成できた。 遺伝子修復治療を行う場合に、ゲノム編集による切断部位にベクターDNAが非相同組換えで組み込まれることが起こる。安全性向上を行うために、細胞に自殺を促す活性を持つiCaspase9遺伝子をドナーDNAに組み込み、非相同組換えが起こった細胞を除去する技術の開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IL2RG領域の配列を含むドナーDNAにVenusレポーター遺伝子を組み込むことにより、遺伝子修復効率をVenus陽性細胞の割合で測定した。ヒト造血幹前駆細胞に電気穿孔法でSpCas9 とガイドRNAをRNP(Ribonucleoprotein)の形で導入して、直後にアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いてVenusレポーター遺伝子を含むドナーDNAを感染させた。15日培養して相同組み換えが起きた細胞をVenus陽性細胞の割合で測定した。ヒト造血幹前駆細胞への遺伝子修復効率は、目標であった10%を超えた38%だった。造血幹細胞コロニーアッセイ(CFUアッセイ)を行うと、遺伝子修復を行った造血幹前駆細胞の未分化性は野生株と変わらなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト造血幹前駆細胞への相同組み換えの効率は目標値を達成したため、今後はゲノム編集によるオフターゲット効果の検証を行う。ゲノムワイドにオフターゲット領域の検出を行うために、CIRCLE-seq法を用いて検証を行う。 iCaspase9遺伝子が組み込みこまれたドナー配列をAAVベクターを用いて培養細胞に導入する。iCaspase9はCIDというダイマライザーを加えると活性を持つので、薬剤を加えた後に非相同組み換えが起きた細胞の割合を測定する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた次世代シーケンサーを用いた研究を、次年度に実行することになったため。
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