2018 Fiscal Year Research-status Report
Metabolic Reprogramming Requires Stem Cell Memory T Cell phenotypes for Cancer Immunotherapy
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18K15290
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
近藤 泰介 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60803765)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腫瘍免疫 / 免疫記憶 / 細胞移入療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
T細胞移入療法は極めて有用ながん治療法であるが、活性化されたT細胞は持続的な刺激を受けて疲弊(Exhaustion)するため、免疫記憶を確立することが難しい。ステムセルメモリーT細胞(TSCM)は近年発見されたメモリーT細胞サブセットであり、ナイーブT細胞とセントラルメモリーT細胞の中間の性質をもつ。TSCMは生体内で強い増殖能力を示し、疲弊しにくいため、T細胞移入療法に最適なメモリーT細胞サブセットであると考えられている。我々は活性化したヒトCD8+ T細胞を、Notchリガンドを発現するフィーダー細胞と共培養することでTSCM様細胞(iTSCM)を誘導する方法を確立した。iTSCMは担がんマウス内で顕著に増殖し、他のT細胞サブセットに比べて強い抗腫瘍効果を示した (Kondo et al. Nat Commun. 2017, Kondo et al. Cancer Science, 2018)。我々は次にiTSCMの代謝学的側面に着目した。活性化T細胞と比較して、iTSCMではミトコンドリアの新生や融合が観察され、ミトコンドリアの酸化的リン酸化が有意に亢進していた。次にiTSCMにキメラ型抗原受容体(CAR)を遺伝子導入したCAR-iTSCMの作成を試みた。ヒト白血病モデルマウスにおいて、CAR-iTSCMは従来のCAR-Tに比べて強い抗腫瘍効果を示した。さらに網羅的遺伝子発現解析の結果からミトコンドリア新生を介してiTSCMを誘導する転写因子を特定した。転写因子の強制発現系を用いることでNotchシグナル非存在化でもiTSCMを誘導することに成功した。iTSCMをCAR-T療法へ応用することで、従来のCAR-T療法に比べてより抗腫瘍効果の高いCAR-T療法を開発できる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は以前活性化したヒトCD8+ T細胞を、Notchリガンドを発現するフィーダー細胞と共培養することでTSCM様細胞(iTSCM)を誘導する方法を確立した。また誘導されたiTSCMは担がんマウス内で強い抗腫瘍効果を示した (Kondo et al. Nat Commun. 2017, Kondo et al. Cancer Science, 2018)。今回我々はiTSCMの代謝学的側面に着目することで、iTSCMの誘導メカニズムおよび強い抗腫瘍効果をもたらすメカニズムの解明を目的とした。iTSCMではミトコンドリアの新生や融合が観察され、ミトコンドリアの酸化的リン酸化が有意に亢進していた。酸化的リン酸化の亢進は抗腫瘍効果を増強することが知られており、iTSCMの強い抗腫瘍効果はこの特徴的な代謝メカニズムに依存している可能性が示唆された。またiTSCM細胞への誘導はミトコンドリアの酸化的リン酸化依存していることが明らかになった。さらに、このミトコンドリア新生はある転写因子によって制御されていることを明らかにし、実際に転写因子の強制発現によりiTSCMを誘導することに成功した。一方でにキメラ型抗原受容体(CAR)を遺伝子導入したCAR-iTSCMの作成を試み、従来のCAT-T細胞に比べて強い抗腫瘍効果を示すことを明らかになった。これらの結果をまとめて、現在国際誌へ論文投稿中であり、当初の研究計画通り進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果から、ある転写因子による細胞内代謝制御によりTSCMが誘導されるメカニズムが明らかになり、さらにフィーダーフリーの培養系を確立できた。これらの結果を踏まえて、現在研究結果を国際誌へ論文を投稿中である。一方でフィーダーフリーの実験系によるCAR-iTSCMの誘導は従来のCAR-T療法を凌ぐ、優れたがん治療効果を期待することができ、臨床応用する価値が高い。現在製薬企業と共同研究により、臨床グレードのCAR-iTSCM細胞誘導培養系の確立を行い、並行して特許申請を行っていく予定である。
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