2018 Fiscal Year Research-status Report
lncRNA機能阻害を介したDNA相同組換え修復の脆弱化とその治療応用
Project/Area Number |
18K15293
|
Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
岡本 有加 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター ゲノム研究部, 研究員 (50625217)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | lncRNA / 核酸医薬 / DNA相同組換え修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍細胞においてはDNA2本鎖切断に対する正確性の高い修復機構であるDNA相同組換え(homologous recombination; HR)修復への依存度が高いことが知られている。HR因子であるBRCA1/2の変異・欠損陽性がんに対する、PARP阻害剤の著効に代表されるように、HR修復は腫瘍治療にあたり重要な分子標的であると考えられているが、有効な分子標的薬の開発は発展途上であり、腫瘍特異性の高い標的候補が求められている。 本研究では、長鎖非翻訳RNA (long non-coding RNA; lncRNA)を標的とし、HR修復不全を誘導することによる抗腫瘍法の開発を目指し、その基盤を築くことを目的として、1.候補lncRNAの阻害によるHR修復不全の確認とその作用機序の解析、2.HR修復制御に関わる新たなlncRNAの探索、3.lncRNA阻害によるHR修復不全の誘導を基盤とした腫瘍治療への展開という3項目に大別して研究を推進する。 初年度である今年度は、項目1および2を中心として検討を進めた。項目1に関して、既に得ていた候補lncRNA2種について、ノックダウン時のがん細胞への効果を検討した結果、細胞増殖抑制および細胞内におけるHR因子の発現低下を認めた。一方で、DR-GFPアッセイによるHR活性の検討の結果、候補lncRNA 2種のうち、1種においてのみ、ノックダウン時にHR活性が60%程度に低下した。また、柱2に関して、公共データベース等を活用し、腫瘍特異的に発現亢進している報告があるlncRNAなどから、HR修復制御に関与するlncRNA候補を選択し、DR-GFPアッセイによりHR活性への影響で絞り込みを行なった結果、新たに3種のlncRNA候補を得た。さらに、HR修復不全誘導活性を有する化合物処理時の、lncRNAを主眼とした遺伝子発現解析に着手した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度である今年度は、既に得ていた候補lncRNAによるHR修復不全の確認とその機序解析から着手した。しかし、HR活性への影響を直接検討可能なDR-GFPアッセイにおいて、当初得ていた候補lncRNAノックダウンによる効果が必ずしも強くなく、2種中1種では抑制活性をほとんど認めなかった。そこで、機序解析や強制発現による効果への検討を一時中断し、HR修復制御に関与すると考えられる、腫瘍で発現がより高いlncRNA候補の探索を行った。探索・絞り込みに際しては、HR修復制御に関与するものをより確度高く抽出できるようにDR-GFPアッセイによるスクリーニングを挟み、当初想定していたより時間を要した。幸い、HR活性をコントロールの50%以下に抑制する候補が3種得られたため、当初の候補と合わせてHR修復制御の機序解析に進める予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、lncRNAを標的としたHR修復不全誘導にもとづく腫瘍治療法の基盤を築くことを目指し、研究を進める。2年目である今年度は、昨年度に新たに得た3種の候補lncRNAも含めて、引き続き候補lncRNAによるHR機能不全誘導の機序解析(項目1)のために、ノックダウン時のHR因子の転写活性等についての検討を進める。加えて、強制発現時のHR活性やHR因子への影響の検討を進める。また、HR修復不全誘導活性を有する化合物処理時のトランスクリプトーム解析を進め(項目2)、現在得ている候補lncRNAの発現変動について検討すると共に、こうした化合物処理時に大きく発現変更するlncRNAについてHR制御活性があるかの検討を行う。さらに、腫瘍治療への展開を目指し(項目3)、候補lncRNAノックダウン時の、シスプラチン等のDNA損傷誘導性抗がん剤やPARP阻害剤に対する感受性への影響の評価を行う。
|
Research Products
(3 results)