2018 Fiscal Year Research-status Report
CMTM6 stabilizes PD-L1 expression and regulates its metastasis in Ewing's sarcoma
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18K15298
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
吉松 有紀 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 特任研究員 (60808632)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | sarcoma / CMTM6 / PD-L1 / microRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
がん(悪性新生物)は、我が国の死因第1位であり、その罹患率及び死亡率の低減化は、保健医療行政上の極めて重要な課題である。また、小児及び若年成人に発症率が高い悪性腫瘍は、根治を目標とした個別化医療の確立が必須であり、それを科学的に担保する根拠・知見の蓄積が重要である。次世代を担う年代の悪性腫瘍による死亡率の低減化を目指した研究を精力的に実施する必要がある。骨軟部腫瘍は小児から若年成人世代に罹患者が多く、悪性腫瘍(いわゆる肉腫)は、転移性であることが多く、予後不良である。希少がんであるが故に臨床検体を用いた解析には限界があり、個別化医療、すなわち診断マーカーから分子標的薬の開発に向けた研究も他のがん種に比べて遅れている。当グループで単離したEWS転移誘発分子CMTM6は、膜局在タンパク質であり、その機能の詳細は不明な部分が多い。2017年、CMTM6がPD-L1の安定化(リサイクリング)に関与するとNature誌に報告され、免疫チェックポイントとの関連が注目を集めている。CMTM6は細胞内グルコース濃度で発現量が制御されており、EWSの転移は微小環境、特に栄養飢餓状態によって誘発される可能性が示唆される。本研究では、CMTM6の機能とグルコースセンサーとしてのmiR-451aが形成する細胞内ネットワークと転移との関連を明らかにすることに加え、PD-L1の発現制御を介した抗腫瘍免疫メカニズムと転移誘発の関連を分子レベルで解明することを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、CMTM6の機能解析を実施した。CMTM6をノックダウンした肉腫細胞の遺伝子発現プロファイルを取得した。CMTM6の枯渇により、細胞膜に局在する成長因子レセプターやサイトカインレセプター等の発現が低下することがわかった。CMTM6によるPD-L1の安定化は、細胞膜からのリサイクリングの制御に起因していることから、PD-L1のみならず細胞膜に局在するレセプター分子の安定性にも関与している可能性が考えられる。即ち、成長因子レセプターの細胞膜局在が適切に制御されないために、その下流ネットワークが抑制されている可能性が考えられる。事実、CMTM6のノックダウンにより、細胞増殖は抑制され、最終的には細胞死が誘導されることがわかった。CMTM6の細胞内局在を解析するために、ドキシサイクリン誘導型の発現ベクターを作成し、肉腫細胞株に導入後に安定細胞株を樹立した。CMTM6は、細胞内で小胞様の構造体に局在すること、細胞膜の近傍では、アクチン繊維と共局在することもわかった。これらの結果から、CMTM6は細胞内小胞に局在し細胞内を移動する分子であると考えられる。この細胞内小胞を特定するために、様々なマーカータンパク質と共染色を行なったが、これまで調べた中には、共局在を示すマーカーは特定できず、極めて特異な脂質膜小胞であると考えられる。細胞分画の検討から、CMTM6は、膜局在型であることもわかった。来年度は、さらに詳細な機能解析を実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
CMTM6の機能は、PD-L1のリサイクリングへの関与以外に明らかになっておらず、機能の詳細を解明する必要がある。最近、CMTM6の高発現は、がん患者の予後不良と相関することが報告された。このことは、CMTM6の機能亢進が、がん悪性化と連携していることを意味している。CMTM6の発現は、成長因子レセプターの細胞膜への局在を安定化させていると考えることができる。また、細胞周囲の栄養状態によって発現が変動することから、CMTM6の発現により肉腫細胞が周囲の特異な微小環境に適応する能力を得ていることが強く示唆される。来年度は、CMTM6の機能解析をさらに詳細に展開し、細胞周囲の栄養状態との関連を明らかにする。そのために、マウス肉腫細胞のCMTM6発現誘導型細胞株と誘導型shRNA発現細胞を樹立し、マウスモデルによる検討も実施する。さらに、miR-451aの細胞外分泌とCMTM6との関連も検討する。これまでの結果から、細胞外へと分泌されるmiR-451aがCMTM6小胞とともに分泌されている可能性も考えられることから、その点についても詳細な検討を加える。
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Causes of Carryover |
研究は計画的に施行したが、6303円の残金が発生した。こちらの次年度使用額は消耗品に充てる予定である。
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