2020 Fiscal Year Research-status Report
蛋白多量体化阻害ペプチドによる新規抗癌機序の解明と細胞内デリバリーシステムの探索
Project/Area Number |
18K15300
|
Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
平井 理子 旭川医科大学, 大学病院, 特任助教 (90596272)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 肺癌 / ドライバー遺伝子 / EML4 / ALK / ペプチド創薬 / 治療 / RAS/RAF / 非小細胞肺癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、EML4のcoiled-coil domainを介したALK融合蛋白の多量体化を阻止することで発癌・増殖を抑制できるかを核心的問いとし、研究を進めてきた。BaF3細胞とFKBPを用いた単量体誘導モデル、蛋白相互作用をみる蛍光タグシステムにより、野生型EML4-ALK陽性BaF3は単量体化により生存増殖が抑制されること、EML4のcoiled-coilの過剰発現により融合蛋白の多量体化と細胞増殖能が抑制されることがわかった。そこでcoiled-coilのアミノ酸配列を模したペプチドを合成し、EML4-ALK発現細胞株(H3122,H2228, EML4-ALKv1 BaF3)に投与すると、増殖を抑制することがわかった。一方で、単量体での活性化が知られているF1174L変異を導入したEML4-ALK F1174L BaF3に対しては、ペプチドによる増殖抑制効果はみられなかったことから、模倣ペプチドが融合蛋白の多量体化阻害に寄与している可能性が示唆された。しかし、FKBPモデルでの単量体化が細胞の大部分を死に至らせたのに対し、ペプチドはALKのリン酸化を低下させたものの限定的な抗腫瘍効果しか得られなかった。そこで、ペプチドの細胞内動態を明らかにするため蛍光ペプチドを投与しフローサイトメトリを行ったところ、投与90分から6時間をピークに24時間後には蛍光がほぼ消失していたことからペプチドが分解や汲み出しを受けている可能性が示唆された。そこで大腸菌により生成した16ヒスチジンタグペプチド、架橋を施した合成ステープルペプチド、市販の細胞膜透過ペプチドの併用などを試みた。細胞膜透過ペプチドの併用は細胞内導入率を著明に向上させたが、増殖抑制効果には著しい向上がみられなかった。ステープルペプチド、ヒスチジンタグはオリジナルペプチドと比較し有意差はみられなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は概ね予定通りに進行している。予定していた細胞内デリバリー改良のための手法は全て試してみたが、予想に反していずれも無修飾のcoiled-coilペプチドとほぼ同等の増殖抑制効果であった。細胞膜透過ペプチドをcoiled-coilペプチドと併用することで細胞内導入率は著明に向上することがわかったが、抗腫瘍効果は非併用群とほぼ同等であった。また、coiled-coilペプチド単独で濃度依存性を調べたところ、増殖カーブはU字曲線となった。以上の結果から、細胞内導入率向上や高濃度曝露が必ずしも有効でないことが、従来の小分子薬剤(チロシンキナーゼ阻害剤など)と異なりペプチド特有のlimitationとなる可能性が示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
EML4-ALKの他のvariantやALK-TKI獲得耐性株を樹立しペプチド作用を検証する。
|
Causes of Carryover |
COVID-19感染症の流行により診療活動の繁忙化と研究活動の中断制限や、学会活動による移動の制限があったため繰り越しが生じた。架橋構造の改変や、耐性細胞の作製、他の融合遺伝子での新たなペプチド合成とその実験等に使用する。
|
Research Products
(8 results)