2018 Fiscal Year Research-status Report
データベースを活用したがん体細胞バリアントの大規模機能解析
Project/Area Number |
18K15305
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
谷本 幸介 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (60611613)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スプライシング / がん体細胞バリアント / TCGA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、公共データベースThe Cancer Genome Atlas(TCGA)に収載されている体細胞バリアントとRNA-seqデータを統合解析することにより、スプライシング制御に影響する体細胞バリアントをゲノムワイドに特定することを目指す。ゲノム医療においてVariants of Uncertain Significanceと呼ばれる意義不明バリアントの存在が課題の一つであるが、本研究はスプライシング制御という観点から体細胞バリアントの意義を明らかにすることができるため、ゲノム医療を推進する上で大きな意義を有すると考えられる。 本年度は25組織のがん計9,635症例のデータをTCGAから取得し、RNA-seqデータを独自の手法でノーマライズし、それらを計156,794の体細胞バリアント情報と統合解析した結果、計646のESE(Exonic Splicing Enhancer)機能喪失バリアントが特定された。ESEfinderを用いてSPprotein結合モチーフを探索したところ、特定したESE機能喪失バリアントはそれ以外のバリアントに比べ有意に既知のSRprotein結合モチーフを含んでいた。また、ヒト培養細胞株において本研究で特定したESE機能喪失バリアント部位をモルフォリノオリゴで阻害したところ、対応するエクソンがスキップされることを確認した。以上より、TCGAデータの統合解析によってスプライシング制御に影響を与えるバリアントをin silicoで特定し、さらにそれらのバリアントが実際にESE上に存在していることを実験的に明らかにすることができた。 今後は、他のデータベースや解析ツールを活用し、特定したESE機能喪失バリアントが遺伝子発現に与える影響やがん種ごとの傾向を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は25組織のがん計9,635症例のデータをTCGAから取得し、RNA-seqデータを独自の手法でノーマライズし、それらを計156,794の体細胞バリアント情報と統合した。ESE(Exonic Splicing Enhancer)上の体細胞バリアントを特定するため、症例ごとに体細胞バリアントが存在するエクソンとその周辺エクソンの発現量を比較し、その変動の度合いをExon exclusion rate (EER)として評価した。EERの値を基準に絞り込んだ候補について、バリアントを持たない症例群の発現量分布をkernel density estimationにより推定し、その分布と比較して有意にエクソンスキップが生じているかどうかを検定した結果、計646のESE機能喪失バリアントを特定できた。 ESEfinderを用いてSPprotein結合モチーフを探索したところ、特定したESE機能喪失バリアントはそれ以外のバリアントに比べ有意に既知のSRprotein結合モチーフを含んでいた。また、ヒト培養細胞株において本研究で特定したESE機能喪失バリアント部位をモルフォリノオリゴで阻害したところ、対応するエクソンがスキップされることを確認した。 以上より、本年度は当初の計画通りTCGAデータの統合解析によってスプライシング制御に影響を与えるバリアントをin silicoで特定し、さらにそれらのバリアントが実際にESE上に存在していることを実験的に明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度特定したESE機能喪失バリアントの遺伝子発現に与える影響やがん種ごとの傾向を、他のデータベースや解析ツールを活用して明らかにすることを試みる。平行して、本研究で開発したESE機能喪失バリアントの検出法が、どの程度の精度で検出可能であるかを、permutation test等の手法を用いて定量的に示すことを試みる。
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