2018 Fiscal Year Research-status Report
循環腫瘍DNAを応用した膵癌術前治療の新規効果判定法とサーベイランス法の開発
Project/Area Number |
18K15314
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Research Institution | National Hospital Organization Nagoya Medical Center |
Principal Investigator |
末永 雅也 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター), その他部局等, 外科医師 (50801627)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 循環腫瘍DNA / 膵癌 / 術前治療 / 効果予測 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、デジタルPCRを用いて膵癌患者の治療前後の循環腫瘍DNAを測定し、膵癌術前治療患者の治療効果予測への応用を目指したものである。当該年度は膵癌患者の血液検体を用いたpilot studyにて循環腫瘍DNAが同定可能であることを確認し、患者同意を得て前向きに保存していた膵癌術前治療患者13例の術前治療前後の計26検体を用いた研究を進めた。血漿からcell-free DNA(cfDNA)を抽出し、術前治療前後のcfDNAの濃度に差は認めず。デジタルPCRによるKRAS遺伝子変異の測定では、KRAS遺伝子変異は10検体(38%)で検出され、検出例における遺伝子変異濃度(allele frequency;AF)の中央値は0.08%であった。術前治療前後でAFの増加は5例(38%)、減少は4例(31%)で、前後ともに遺伝子変異検出なしが4例(31%)であった。術前の画像評価による効果判定は5例がpartial response(PR)、8例がstable disease(SD)であり、PR例では4例(80%)でAFの減少、1例(20%)は遺伝子変異検出なしで、SD例では5例(63%)でAFの増加、3例(38%)で遺伝子変異検出なしであった。術後標本における膵癌取扱い規約に基づく組織学的効果判定は、AFの減少例では4例中3例(75%)でgrade 3以上の組織学的効果を認め、うち1例はpCRであったのに対し、増加例では全例でgrade 2以下の効果であった。減少例の4例は全例で癌遺残なし(R0)の切除がなされたのに対し、増加例の5例中2例(40%)では癌遺残(R1)であった。本法による循環腫瘍DNA測定は、既存の画像検査やマーカーによる効果予測を補い、術前治療の効果を適切に予測する可能性が示唆された。以上の成果は、2018年11月の日本消化器癌発生学会(東京)にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に予定していた研究は、症例数は当初の見込みよりもやや減少したが概ね達成された。今後の症例の蓄積と、観察期間をおいての予後との関連の検討が待たれる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き膵癌術前治療患者の症例の蓄積と予後を含めた臨床病理学的因子との検討を進める。 現在、共同研究者から膵癌患者における術前治療もしくは化学療法を施行された患者の経時的な血液検体の提供を受けており、循環腫瘍DNAが膵癌患者の治療経過中のサーベイランスにおける鋭敏なバイオマーカーと成り得るかという本研究のもう一つの課題の検討を進める。
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Causes of Carryover |
当該年度に申請者の主たる所属先の転勤があり、症例解析にやや遅延が生じたため。 現在、前所属施設の客員研究者として現所属施設と共同研究を進める関係を構築しており、現所属施設での研究環境も整った。前年度に予定していた研究を次年度に進めるために次年度使用額は必要である。
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