2020 Fiscal Year Research-status Report
SNPアレイおよびctDNAバーコードシーケンスを用いた食道早期がん診断法の確立
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18K15323
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
鶴田 祐介 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 医員 (70812767)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | liquid biospy ctDNA / 早期診断 / 食道がん / 発がんハイリスク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は 食道扁平上皮癌(ESCC)は悪性度の高い癌腫であり予後改善をめざすことにある。このためのアプローチとして、術後転移再発の早期診断を掲げている。食道がんの再発転移の選択圧となる因子は原発巣における放射線化学療法感受性(CRT)抵抗性にあることから、CRT感受性(抵抗性)をリキッドバイオプシー(ctDNA)で診断する。まず最初に治療抵抗性についての理解を深めた上で標的の同定を目指すこととした。 WESの結果、SNVでは抵抗性と感受性とを明確に区別する特異的変異遺伝子を同定しえなかった。したがってコピー数変異を含めて包括的にゲノム変異を見直した。一方、CRT治療を受けたESCC患者33人(昨年度比プラス4例)の52個の腫瘍サンプルの全ゲノム配列を解析した。特に5例については、治療前と局所再発時の病変をマルチサンプリング解析した結果、元々トランクに存在したほとんどのドライバー遺伝子変異クローンはCRTの選択圧を受けて生き残ったが、再発時に新たに獲得されたドライバー変異はほとんどなかった。また、再発ESCCのCRTによって誘発される変異シグネチャーとして、欠失数の増加やプラチナ製剤の用量依存性のシグネチャーを新たに同定した。また、治療前の28個の腫瘍をシングルサンプリングで解析した結果、MYC遺伝子座のコピー数増加が転帰の悪化を予測するバイオマーカーとして同定された。MYC遺伝子の増幅はCRT治療期間中も継続し、CRTに対する内在性の抵抗性を引き起こす可能性を明らかにした(Cancer Res, revise中)。またMYC増幅を組織生検ならびにリキッドバイオプシー解析(dPCR)による感受性(抵抗性)標的とするべく鋭意準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究のプライマリエンドポイントであるESCC術後のCRT後転移再発の早期診断のためには、本質的なゲノムレベルの標的の同定が必須であり、検証を含めて明確に決定されなければリキッドバイオプシー解析への展開へと繋げることはできなかった。お時間を延長いただいたお陰で、われわれはゲノム進化解析によりCRT前より存在するMYCがCRTという選択圧をうけても再発を決める重要なドライバーとなることを明らかにし論文投稿にいたった。そのMYC増幅の意義を検証するための実験に時間を要したために研究は遅延したが、明確な回答が得られた今、頂いた時間を有意義に費やせたと考えて居る。 最後に、研究遂行にあたってはコロナ禍の影響でPCRの試薬が滞ったりするなど影響は大きかった事も述べておきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、コロナウイルスで計画していた進捗とは異なってしまったが、食道がん研究においては、NOTCH1はじめctDNAにおける変異検出のためのカスタマイズ癌パネルの作成に成功した。血液検体を有しており実際の有用性について明らかにする。 また、発がんハイリスク者からのリキッドバイオプシーについては、上述のごとく特異マーカー15遺伝子を同定しており、リンチ症候群の大腸発がん患者と同非発がん患者、さらに通常の散発性大腸がん患者を対象に採血の上、ctDNA target Seqを実施する。
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Causes of Carryover |
コロナの影響で参加予定の学会が中止されたり、ミーティングの為に計上していた旅費を使用しなかった。次年度では、参加可能な学会に参加していくと共に、収集した検体の解析を行っていく。
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