2018 Fiscal Year Research-status Report
消化管癌のctDNAによる長期間モニタリングシステムの構築
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18K15326
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 慧 岩手医科大学, 医学部, 任期付助教 (60803591)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 消化管癌 / Circulating tumor DNA / 遺伝子変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題では食道がん、接合部がん、胃がん、大腸がんの4種の消化管がんを対象に個々のがん腫における共通部分・相違部分を比較し、効率的なctDNA monitoring法を検討する。近年のがんゲノム診断では対象とする遺伝子を数十個~数百個に絞りNGSを行う遺伝子パネル検査が用いられることが多くなっている。標的領域を絞ることで微量検体からの解析が可能となり、また分子バーコード法を用いたerrorの減少によりctDNAを直接NGS解析する報告も見られる。一方、dPCRではKRAS、BRAF、EGFR、PIK3CAなどの多がん腫にわたり見られるHotspot変異には動作確認済みのAssay kitが市販されており、血漿を用いたmonitoringや治療経過中の薬剤耐性変異の出現の報告も見られる。しかし、いずれの手法も長所短所が存在し、ctDNA monitoringの実臨床への応用にはコストや解析にかかる労力も考慮し、がん腫によるアプローチ法の選択と工夫が必要である。本研究ではこれまでの研究室独自に培った経験を基に、食道がん、接合部がん、胃がん、大腸がんの4種の消化管がんを対象として、個々のがん腫における共通部分・相違部分を比較しながら、効率的なctDNA monitoring法を検討する。本研究により、大腸がんのようにHotspot変異を有するがん、変異の比較的少ないがん、食道がんのようにHotspot変異を有さず多数の遺伝子に変異が生じるがん、胃がんのように腫瘍内でのheterogeneityに富むがん、接合部がんのように起源となる細胞・臓器の確定が困難ながんなど多様ながんに対するliquid biopsyの応用の仕方が明らかにできるものと思われる
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食道癌では60症例が登録され順調に症例集積、治療経過中の血漿サンプルを集積しており、研究は順調に経過している。36例までの解析で原発巣変異解析では平均4.2個の遺伝子変異が検出された (VAF>5%)。症例特異的変異を標的とするPrimer/Probeを独自にデザインし、すでに60変異に対するPrimer/Probeを作成し、原発巣DNAを用いた動作確認を行った。これらのProbeを用いたctDNAモニタリングシステムは、Stage IA表在癌ではctDNAは検出されなかったが、tumor volumeが3.8cm3以上、Stage IB以上ではctDNA陽性であった。化学療法の正確な効果判定、治療後の遺残腫瘍の存在の推定、3-6か月早い再発診断、予後予測に有用である可能性を示した。治療後早期にctDNAが陰性化する症例は、陽性持続例に比較し有意に予後良好であった。食道癌では本システムにより、intensiveなctDNAモニタリングが予後、治療効果予測に役立つことが示唆された。大腸癌50例、胃癌20例が登録され、大腸癌12例、胃癌10例については原発巣3ヶ所より組織を採取しそれぞれ151遺伝子を標的とした遺伝子パネルを用いNGS解析を施行した。食道癌と同様に症例特異的変異のdPCR-ctDNA解析を施行した。大腸癌ではStage III以上の症例のうち80%以上でctDNA陽性であったが、胃癌では30%と低率であった。原発巣3ヶ所で共通して検出される変異は、2か所もしくは1か所のみで検出される変異に比べ、原発巣変異アリル頻度、血漿中の変異アリル頻度も高かった。1変異アリル頻度の高い原発巣の変異検出率が問題となるが、各癌種における効率的な遺伝子パネルを準備することが重要であると考えられた。ctDNA陰性症例に対する原因の検索と次のアプローチを検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策の1つとして、本研究で用いている「癌腫特異的遺伝子パネルを用いた次世代シークエンサーによる変異スクリーニングを行い、高VAFを有する検出変異のdigital PCRによるctDNAモニタリングシステム」の有用性を明らかにすることがある。大腸癌では151遺伝子を標的としたPan-cancer panelと40遺伝子に絞った大腸癌パネルで変異検出率に大きな差はなかったのでパネルの簡略化が期待できる。胃癌原発巣解析に用いた151遺伝子のパネルでは、胃癌で変異頻度の高いRHOAやARID1Aなどが搭載されておらず、特に日本人胃癌の変異状況を考慮した遺伝子パネルの作成が必要かと思われる。ctDNA解析用の症例特異的Primer/Probeセットは1症例ごとに蓄積されるものであるが、TP53変異は症例間で共通するものも多く、データベース上で高頻度の変異のあるものからプローブライブラリーを作成している。大腸癌、胃癌ではKRAS, BRAF, PIK3CAなど市販のProbeもあり、これらを併用することで複数の変異のモニタリングが可能となる症例も多い。多数の変異をモニタリングできれば当然正診率も向上するが、手間やコストも上昇し、必要なtemplate DNA量も増加する。今後適切なctDNA解析方法を明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
本研究で採用している血漿DNA採取に特化したBCT採血管は高額である。研究参加協力患者の増加とともに多量の採血管が必要となってきている。50本、100本単位で購入するよりも、500本、1000本単位で大量に購入した方が価格を抑えることができるため、次年度予算と残額を合わせまとめて購入する方針とした。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] The clinical utility of ctDNA in colorectal cancer validated by multiregional sequencing and protein analysis2019
Author(s)
Mizunori Yaegashi, Takeshi Iwaya, Masashi Fujita, Zhenlin Ju, Doris Siwak, Kei Sato, Fumitaka Endo, Ryo Sugimoto, Tamotsu Sugai, Lance Liotta, Yilling Lu, Gordon Mills, Hidewaki Nakagawa, Satoshi S. Nishizuka
Organizer
アメリカ癌学会
Int'l Joint Research
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