2020 Fiscal Year Research-status Report
カプセル形状が細胞取込に及ぼす影響の解明および魚雷型カプセルを用いたがん治療
Project/Area Number |
18K15334
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
上田 一樹 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (10615040)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 抗がん剤 / がん治療 / ドラッグデリバリー / 形状 / ペプチド / アスペクト比 / キャリア / 分子集合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの報告のとおり申請時の課題は2年間で論文化まで達成している。3年目は、魚雷型カプセルを用いたがん治療という主目的を達成するため、これまでの研究から見えてきた魚雷型カプセルの問題点の克服について研究を行った。具体的には①詳細な体内動態評価、②肝臓集積を抑制した魚雷型カプセルの開発、③魚雷型カプセルの調製効率の向上である。 ①近赤外蛍光プローブで標識した魚雷型カプセル、球状カプセル、市販のステルスリポソームを胆がんマウスに投与し、体内動態を評価した。その結果、球状に比べて魚雷型カプセルは、24-48時間にかけてヒト乳がん細胞(MDA-MB-453)、マウス乳がん細胞(4T1)、マウスリンパ腫細胞(EL4)において高い腫瘍集積性が確認された。リポソームに比べて肝臓集積が多いことも明らかとなった。 ②次に、魚雷型カプセルの肝臓集積を抑制するため、表面ポリサルコシン密度を向上させた魚雷型カプセルの開発を行った。疎水部の両端に親水鎖が結合したボラ型の両親媒性ポリペプチドSL12Sの合成を行った。SL12とSL12Sの混合比を変えることで理論的に表面ポリサルコシンの密度を制御することが可能であり、10:0, 9:1, 7:3, 5:5, 3:7の構成から集合体を調製し、透過型電子顕微鏡により確認した。 ③魚雷型カプセルの調製効率は40-80%程度であったため、平行して調製効率の改善を行った。従来SL12、SL16の組み合わせで魚雷型カプセルを調製していたが、SL16単一系集合体の形成が、SL12とSL16複合体による魚雷型カプセルの調製効率が低下させていた。そこで、臨界ミセル化濃度が高く単一系集合体を形成しづらいiSL12を合成し、SL12と組み合わせて魚雷型カプセルの調製を行ったところ、SL12:iSL12 = 2:1のとき95%以上の収率での魚雷型カプセル調製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は4年の計画であるが、2年目に当初の2つの目標(①カプセル形状が細胞取込に及ぼす影響の解明、②魚雷型カプセルを用いたがん治療)を達成し、論文にまとめた。さらに3年目において材料の改良(収率向上)に成功しており、今後本件も論文としてまとめる予定でいる。もう一つの材料の改良(肝臓集積の抑制)も4年目に行うべく材料開発はすでに終了しており、進捗としては申し分無いと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である4年目は、3年目からの継続課題として①高密度ポリサルコシンコーティングによる魚雷型カプセルの肝臓集積の抑制を目指すとともに、本材料・本研究の今後の発展のためこれまで困難としていた②魚雷型カプセルの直径の精密制御、および③カプセル直径が細胞内取込に及ぼす影響の評価に挑戦する。将来的に、魚雷型カプセルを用いたがん治療という主要目的を達成させるための必要研究であり、研究計画に大きな変更は無い。
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