2018 Fiscal Year Research-status Report
放射免疫療法後の腫瘍微小環境の形成阻害による治療効果への影響
Project/Area Number |
18K15335
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
藤原 健太郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 分子イメージング診断治療研究部, 博士研究員(任常) (80766907)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 核医学 / 放射線医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線治療後の壊死した領域に浸潤する線維芽細胞等が形成する腫瘍微小環境が、障害を受けたものの残存した腫瘍細胞の生存・回復に寄与している可能性があることから、本研究では放射線治療と線維化阻害剤の併用による治療に対する影響を評価した。2018年度は小細胞肺がん移植マウスに外部照射による治療を行った後、線維化阻害剤ピルフェニドンの継続的な腹腔内投与による併用治療を行い、治療効果への影響を評価した。その結果、併用治療群の腫瘍は放射線治療単独群と比べて腫瘍の再増殖が数日遅れる傾向が確認された。本結果は、ピルフェニドンによって線維芽細胞の作用が阻害されたため、放射線によって傷害を受けた細胞がダメージから回復し再増殖を開始するまで、放射線治療単独群よりも時間を要したためと推察される。治療後に形成される腫瘍微小環境の形成を阻害することは、残存した腫瘍細胞の回復を遅らせ、治療効果の増強に繋がる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射免疫療法と線維化阻害剤の併用による効果を事前に評価するため、外部照射装置による治療と線維化阻害剤の併用治療実験を行った。その結果、併用により治療効果が増強する可能性が示唆された。2018年度中に1回目の放射免疫療法と線維化阻害剤の併用実験を行う予定であったが、動物実験施設の閉鎖に伴う予定の遅れのため、2018年度中の実施は見送った。2019年度から上記併用治療実験を行うこととし、以上のことから、「おおむね順調」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の実験により、放射線治療と線維化阻害剤を併用することで、放射線治療の効果を増強できる可能性が示唆された。シスプラチン等の従来の抗がん剤にも放射免疫療法に対する一定の増強効果が認められているが、全身の細胞に作用するため、治療効果と同時に造血系を中心とした副作用も強くなる欠点がある。線維化阻害剤はその作用機序から、前述の抗がん剤よりも副作用への影響は少ないことが期待される。以上のことから、2019年度は放射免疫療法と線維化阻害剤の併用治療の効果について評価する。2018年度に評価したピルフェニドンに加え、一定の抗腫瘍効果が期待されているニンテダニブによる併用治療も並行して実施する。
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Causes of Carryover |
2018年度は放射免疫療法の実験で使用する放射性核種イットリウム90の購入を予定していた。しかし、2018年に本機構動物実験施設で動物の感染症疑いの事例が発生し、飼育エリアの洗浄のため、施設が閉鎖される期間が生じた。この不可抗力の事態により実験は一時中断となり、イットリウム90を用いた実験はスケジュール上実施不可能となったため、当該実験の経費相当分を次年度に繰り越すこととした。
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