2018 Fiscal Year Research-status Report
ヒトの体性感覚皮質3b野における皮膚感覚受容野のコラム構造の解明
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18K15339
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
于 英花 岡山大学, ヘルスシステム統合科学研究科, 特別研究員(RPD) (60812039)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 体性感覚皮質 / 7T-fMRI / コラム構造 / 脳科学 / 触覚情報処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
ものに触れたときに得られる皮膚感覚情報は,脊椎や視床などを経由して大脳皮質の中心後回にある体性感覚皮質3b野に到達することは,脳機能イメージング研究で明らかにされている。また,サルを用いた研究により,皮膚内部にある2種類の皮膚感覚受容器(SAとRA)に対応する皮膚感覚受容野がコラム構造をなすことが示されたが,ヒトの3b野において同様なコラム構造をなすかは未だ解明されていない。本研究の全体目標は,超高磁場機能的磁気共鳴画像法(7T-fMRI)を用いてヒトの3b野におけるSAとRA受容野のコラム構造を解明することである。 前記の目標達成に向けて,初年度では当初計画していったSAとRA受容器を選択的に刺激できる触覚刺激と刺激法の選定が行った。これまでの知見により,SAとRA受容器は皮膚と対象の接触で得られた時間的・空間的情報に対して異なる応答特性を示すことがわかった。具体的に,圧覚刺激の場合,RA受容器はトランジェントの発火を示しているに対して,SA受容器は刺激期間中に持続的に発火している。一方,振動刺激の振幅が一定で振動周波数の増大に従ってRA受容器の発火強度が強くなるが,SA受容器は一定で小さい。サルを用いた研究の場合は,3b野に電極を刺し,指先に2秒間の圧覚刺激を提示するだけでSAとRA受容野の異なる活動パタンを検出できたが,fMRI技術の性質上の制限により,前述のSAとRA発火特性を利用した手法はヒトのfMRI研究に適用できない。そのため,今年度では,数種類の触覚刺激を用いた刺激選定fMRI実験を実施した。その中から粗さが異なる凸状ドットパターン刺激と,独自で考案した実験パラダイムはSAとRA受容野のコラム構造の同定できる可能性が高いことがわかった。この触覚刺激と実験パラダイムの選定は本研究随行に必要不可欠であり,次年度の研究実施に大きく貢献している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度において,初年度で予定していったSAとRA受容器を選択的に刺激できる触覚刺激と刺激法の選定が行った。本研究の計画当初から動物研究(主にサル)で用いたSAとRAの発火特性を利用した手法は,本研究へ適用が困難であると予測した。そのため,代表者らはSA受容器が低周波数(1から5Hz)の振動に敏感に反応するに対して,RA受容器が高周波数(30から100Hz)の振動に強く反応することに注目して,数種類の刺激候補の中から粗さが異なる凸状ドットパターン刺激を選んで検証実験を実施した。具体的に,これまでの研究で用いた規則性のある凸状ドットパターンの粗さを変え,さらに異なる速度で対象被験者の人差し指下で移動することで,皮膚接触面に対して,擬似の低い(約4Hz)と高い(約40Hz)振動周波数を発生させることができた。次に,この刺激を用いた7T-fMRI実験を実施し,3野におけるSAとRA受容野のコラム構造の同定できる可能性が高いことがわかった。また,この成果は,2019年5月にカナダで開催予定の27th ISMRM Annual Meetingに採択され,口頭発表を予定している。以上のように,次年度の研究実施に必要不可欠なデータと知見が得られ,本研究課題は概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では,当初予定している超高磁場7T-fMRI撮像シークエンスの改良と実験パラダイムの考案を行う。具体的に,これまでの研究で使用したBOLD(Blood Oxygenation Level Dependent)とVASO(Vascular Space Occupancy)同時計測撮像シークエンスの解像度の向上(体性感覚皮質3b野のコラム構造を分解できるレベルを目指す)とノイズの低減を目指す。実験パラダイムとして,まずPhase encoding designを用いて低周波刺激と高周波刺激それぞれに対して3b野における脳活動の相関マップを得る。次に,Random block designを用いて各刺激タイプの相関マップにおける刺激場所と順序の変化に伴う脳活動の強さを観察する。以上の実験を繰り返し更新することで,3野におけるSAとRA受容野のコラム構造の同定に必要な刺激と実験パラダイムの決定を目指す。
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Research Products
(3 results)