2018 Fiscal Year Research-status Report
Investigation into possible cognitive enhancement of tool recognition by transcranial direct current stimulation (tDCS) and its neural mechanism
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18K15344
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石橋 遼 東北大学, スマート・エイジング学際重点研究センター, 助教 (90750266)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 意味認知 / 道具使用 / 経頭蓋直流電流刺激 / fMRI |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主要な進捗内容は以下の二点である。まず本年度前半に本研究計画を実施するために東北大学倫理審査委員会に計画全体の内容を提出し、審査の後承認を得た。つぎに本研究計画についてMRI装置の使用許可を得るため現所属先のMRI研究グループにおいて具体的な計画の実効性を議論した。実施に当たっていくつか指摘点・改善案があり、対応を検討した。具体的にはまず課題の設定において当初利用を予定していた課題(道具の意味認知課題)以外に統制課題を設けることの有用性が大きいと判断されたため、これを新たに作成することとした。また課題に用いる視覚刺激(日常的に見かける・使用する道具の写真データ)について、先行研究(Ishibashi et al., 2018)の内容を参考に絞りこみ、必要な108個の道具写真のリストを作成した。また、経頭蓋直流電流刺激(tDCS)を適用する脳部位について、頭頂葉を刺激する場合にワーキングメモリ関連部位を同時に刺激するのではないかという指摘があり、これまでの認知神経科学研究のメタ分析(Wang et al., 2019)と報告者の過去のメタ分析(Ishibashi et a., 2016)のデータからその可能性を検討した。結果として、IPL内で道具認知における活動部位の中心とワーキングメモリにおける活動部位の中心との距離は1.9cm程度と見積もられ、tDCSで同時に刺激される可能性は高いと考えられた。この点に関して現在対応を検討中であるが、実験課題の設定を変更してワーキングメモリを必要としない課題状況を設定する方向で調整を進めている。これらの変更点に基づき、2019年度に予備調査を行って課題を確定したうえで本実験を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前述の通り、所属研究グループにおける議論の中で見いだされた問題点が2つあり、対応に時間を要した。また、本年度は所属研究室においてfMRIを用いる別の研究計画2件が新しく立ち上がり、また関与する学生への研究指導義務も生じた。これらにより当初の予想を上回って申請計画以外の研究・教育活動へのエフォートが大きく生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策について、以下の2点を考慮する。一つめに本研究において当初使用を予定していた認知課題の「ワーキングメモリ」要素の必要性を再度検討する。本研究計画では表象類似度解析(RSA)を用いる予定であるが、その際にこの方法を使用しているこれまでの多くの先行研究とは異なり、連続して提示される刺激に対して、その意味が直前のものと似ているか判断してもらう(1-back課題)ことを予定していた。このような課題形式では必然的に、被験者はある試行で得た情報を次の試行まで脳内において保持しておく必要があるが、このことは情報処理の時間を延ばすという意味で、時間的解像度が粗いfMRI技術の弱点を補完しうる手法であると代表者は考えている。ただし観察されたtDCS介入効果が真に「道具の認知的処理」に特異的なものなのか、それともワーキングメモリのように一時的に情報を処理する場合に共通のものなのかという点が明確にできない。そのため、少なくとも「道具」以外の視覚刺激(無意味な図形など)を用いた統制課題を設定する必要があり、現在刺激の種類の検討を進めている。2つ目にtDCSを適用する脳部位の問題があり、前述のように下頭頂小葉(IPL)はワーキングメモリを要する課題において活動が報告されることも多いため、この部位へのtDCS適用は統制課題の課題成績にも影響する可能性がある。ただし1-back課題という記憶負荷の小さい状況でも実際にtDCSの効果が見られるのかは不明であり予備調査の必要性がある。統制課題へのtDCS効果がやはり生じてしまうようであれば1-back課題でなく0-back(何らかの基準に合う視覚刺激かどうかを毎回判断)の形式によって実験を行う。この場合前述のような情報処理時間延長という効果は望めないが、RSAの手法を使用した多くの先行研究と直接的な比較検討が可能であるという利点を見込む。
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Causes of Carryover |
前述の進捗状況を鑑みて、実験に用いる認知課題の作成に時間を要することが予想されたため、資金の一部の使用を延期し、次年度2019年度実施の予備調査・実験に使用することとした。
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