2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K15345
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
征矢 晋吾 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (90791442)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | オレキシン / PTSD / 睡眠 / 恐怖記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは,視床下部のオレキシンニューロンがオレキシンの1受容体(OX1R)を介して扁桃体へ入力する青斑核のノルアドレナリンニューロンを活性化し,恐怖記憶形成および恐怖応答に関わることを見出した。申請者らはこれまでに、OX1R拮抗薬を用いることで、恐怖体験によって形成された恐怖記憶を想起する過程において恐怖応答が減弱することを示した(Soya et al., 2017)。しかし、恐怖応答におけるOX1Rの役割については世界的にも研究が少ない。近年、このOX1R拮抗薬が恐怖記憶の消去を促進することも報告されており(Flores et al., 2014)、PTSD治療薬としての可能性を秘めていることからオレキシンと恐怖応答の関係性に焦点を当てた総説を発表した(Soya and Sakurai, 2018)。また、オレキシンは覚醒の維持に関わる重要な物質であるが、OX1Rを介して下流のセロトニンニューロンやドーパミンニューロンを制御することで、恐怖応答に関与することも明らかになってきている。PTSDやうつ病患者においては高い確率で睡眠障害が併発することが知られている。過度な恐怖による睡眠障害において、オレキシンとその下流の神経回路の役割が明らかになれば不眠に関与する神経メカニズムの解明に寄与できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オレキシンは下流のモノアミンニューロンに発現するOX2Rを介して覚醒の維持に重要な役割を果たしていることが知られている。申請者らはこれまでにOX1Rが恐怖応答に関与すること、その作用機序として、OX1Rによるノルアドレナリンニューロンの制御が重要であることを報告してきた。これらの知見を基に、恐怖応答におけるオレキシンの役割についての総説を発表した(Soya and Sakurai, 2018)。上半期の研究によって、ドーパミンニューロンやセロトニンニューロンに発現するOX1Rについても恐怖記憶や恐怖応答に関与していることが明らかになってきている。また、OX1Rノックアウトマウスでは野生型に比べて恐怖応答は減弱していたが、恐怖記憶を想起した後に野生型で見られたような過度な覚醒時間の延長は見られなかった。したがって、恐怖応答の度合いによってその後の睡眠覚醒が影響を受けることが示唆される。これまでにOX1R拮抗薬が恐怖応答を減弱させることを報告したが、その後の睡眠覚醒動態を検討することで過度な覚醒を抑える効果についても検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって、オレキシンがOX1Rを介して下流のモノアミンニューロンを制御することで、恐怖応答や過度の覚醒状態にも重要な役割を果たすことが明らかになってきた。また、恐怖応答を減弱させることで、その後の過度な覚醒状態を抑制できる可能性を見いだしつつある。ノルアドレナリンニューロンだけでなく、セロトニンニューロンやドーパミンニューロンにも焦点をあて、神経特異的な手法を用いてこれらのニューロンを操作し、恐怖応答およびその後の過覚醒との関係を明らかにする。また、OX1Rの拮抗薬をこれらのニューロン群の起始核に直接投与することによって、恐怖応答や過度な覚醒状態におけるオレキシンの役割を検討する。
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Research Products
(5 results)