2018 Fiscal Year Research-status Report
化学遺伝学による、柔軟な行動を実現するための霊長類神経経路機能の解明
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18K15353
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
小山 佳 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 脳機能イメージング研究部, 研究員(任常) (50615250)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 霊長類 / 化学遺伝学 / 報酬 |
Outline of Annual Research Achievements |
3頭のサルの前頭眼窩野に、抑制性DREADD(hM4Di)をコードしたAAVベクターによる、遺伝子導入手術を行った。導入手術を行ってからおよそ一か月後に、PETを用いた機能遺伝子の発現確認を行ったところ、前頭眼窩野内の広範な領域に十分な程度の発現が確認できた。そこで、これらの個体に対し、報酬の価値やルールを基にした柔軟な意思決定を要求する行動課題の訓練を行った。数か月の訓練の後、動物は課題のルールや提示される刺激の価値に応じて、適切な行動を選択することができるようになった。その後、DREADDアゴニストの全身投与による前頭眼窩野の機能阻害が、本行動課題にどのような影響を与えるかを調べる行動実験を行った。その結果、課題のルールが切り替わる際の価値判断において障害がみられたものの、それらの価値を学習する段階においては障害はみられなかった。この結果は、前頭眼窩野は、状況の変化に柔軟に適応するうえで重要な役割を果たしている一方、価値の学習やその価値に基づいた比較的単純な判断を行う際には重要ではないことを示唆するものである。また、本実験でも用いている、これまでのものより選択性が高く副作用が小さい新規DREADDアゴニストの開発を行い、現在論文として投稿中である。 現在、これらの個体を用いて、線条体、視床、および扁桃体の各領域へのDREADDアゴニストの局所注入による、特定神経経路選択的な抑制が、本行動課題の遂行にどのような影響を与えるかを調べる実験を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、初年度にリガンド全身投与による前頭眼窩野の機能阻害実験を完了させられたとともに、新規DREADDアゴニストの開発も並行して行うことに成功しており、当初の計画以上の進展が行われたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、各皮質下領域へのDREADDアゴニストの局所注入による、特定神経経路選択的な機能抑制実験、および、神経活動記録実験を行っていく。
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Causes of Carryover |
実験に使用するサルの購入を計画していたが、所属機関において元々使用していた動物を流用することにより経費の削減に努めた。その分を、神経活動記録実験にて用いる電極の購入に充てる予定である。
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