2018 Fiscal Year Research-status Report
社会的ストレス脆弱性・レジリエンスを規定するカルボニルストレス関連分子基盤の解明
Project/Area Number |
18K15354
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
鈴木 一浩 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 研究員 (90813907)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カルボニルストレス / 社会的敗北ストレス / レジリエンス / 統合失調症 / うつ病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は統合失調症発症時の社会ストレス脆弱性の低下に対してカルボニルストレスが与える影響を、マウスの社会的敗北ストレス負荷モデルを用いることで明らかにすることを目的とする。 計画初年度となる平成30年度は、まず、マウスの社会的敗北ストレス負荷実験系を確立を行った。C57BL/6Jマウスに対しCD1マウスによる社会的敗北ストレス負荷を10日間繰り返すことにより、社会性行動の低下と社会回避行動の増加、そして不安様行動の亢進(高架式十字迷路)などの行動変化を認め、それは4週後にも残存した。これらの結果から社会的敗北ストレス実験系は確立できたと考えられる。 次に、コントロール群と社会的敗北ストレス負荷後の脆弱群、レジリエンス群について、血中・脳内の生化学マーカーを測定し、コルチコステロンを代表とする一般的ストレスマーカーの上昇を確認した。現在はペントシジンなどの最終糖化産物と、グリオキサール・メチルグリオキサールなどの反応性カルボニル化合物を測定し、さらにはその前駆物質としてのグルコースを測定し、比較検討を行っている。 さらに、カルボニルストレス亢進に伴う社会敗北ストレスレジリエンスの変化を評価するため、Glo1野生型マウスとノックアウトマウスを用い、社会的敗北ストレスによる行動変化を検討した。10日間の社会的敗北ストレス負荷では、Glo1野生型マウスとノックアウトマウスはともに社会性行動の低下を示し2群間に差は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の根幹をなす社会的敗北ストレスモデルについて、概ね先行研究と同様の行動変化が再現され、さらにコルチコステロンなどの一般的ストレスマーカーの変動を確認されており、当初の平成30年度研究計画を達成できている。 さらに、現在カルボニル化合物の測定を開始し、カルボニルストレス亢進モデルの行動変容について行動実験を行うに至っており、本研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、最終糖化産物、反応性カルボニル化合物、さらにその前駆物質としてのグルコースを測定し、社会的ストレスによってどの程度高カルボニルストレス状態がもたらされるのかを検討する。 同時にGlo1ノックアウトマウスなどの高カルボニルストレス状態を模したモデルマウスにおける社会的ストレス脆弱性の変化を確認する。 これらを組み合わせることで、統合失調症などの精神疾患と高カルボニルストレス状態の因果関係を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
計画的に概ね予定通りの予算執行を行った。 端数が生じたため、その分は来年度の消耗品費に充てる予定としている。
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