2021 Fiscal Year Research-status Report
Dual energy supplyによる血管性認知症に対する新規治療法の開発
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18K15364
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
北村 彰浩 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (80636019)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 血管性認知症 / ケトン体 / 1, 3-ブタンジオール |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景】脳は主にグルコースを栄養源とするが飢餓状態ではケトン体を利用する。1,3-ブタンジオール(BD)は肝臓で直接ケトン体に変換され、低糖質、インスリン分泌抑制を来すことなく糖とケトン体を同時に脳に供給することを可能にする。慢性脳低還流が主要因である血管性認知症における1, 3-BDの有用性を検討する。【方法】マウスの両側総頚動脈にマイクロコイルを装着して血管性認知症モデルマウスを作成し、通常食(N群)、通常食+1,3-BD(BD群) 、ケトン食(K群)、偽手術・通常食(Sham群) の4群で比較検討した。解析項目は、体重、血糖とケトン体測定、空間作業記憶(Y迷路試験)、脳血流(レーザースペックル血流計)、炎症・脱髄・グリオーシス等の組織学的検索等を術後28日目に施行した。また、ケトン体を肝外組織で利用するのに重要なスクシニル-CoA:3-ケト酸CoAトランスフェラーゼ(SCOT)、細胞におけるタンパク質合成に関わるリン酸化リボソームタンパク質S6を、術後3日、28日で、免疫組織染色で評価した。【結果】N群ではSham群に比し、有意な脳血流低下と空間作業記憶障害が既報告と同様に再現された。BD群では、N群に比し脳血流の改善は無いが、空間作業記憶はSham群と同程度まで有意に改善した。一方、K群では、脳血流はN群、BD群に比しSham群と同程度までの有意な改善を認めた。空間作業記憶は、N群に比し改善の傾向を認めたが、固体間差が大きく有意差には至らなかった。SCOT、リン酸化リボソームタンパク質S6の免疫組織染色は各群で有意な差は認めなかった。血中ケトン体は、BD群、K群で有意な増加を認め、血糖はSham群がN群に比し有意な上昇を認めた。体重はK群で、N群、Sham群に比し有意に増加した。【結論】1,3-BDは通常食事下でケトン体濃度を有意に増加させ、慢性脳低灌流モデルマウスにおいて空間作業記憶の有意な改善を示した。同薬剤が血管性認知症の新たな治療薬となる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1-3ブタンジオールの生産制限により入手困難となったこと、染色、脳血流測定の誤差が大きくトラブルの修正に予想以上の時間を費やしたこと、動物実験施設の感染問題が生じ実験が中断したこと、臨床業務との関連で予想以上に時間の制限が加わったこと、等が影響した。
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Strategy for Future Research Activity |
あと一年で当初予定していた研究計画内容を引き続き推進していきます
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Causes of Carryover |
マウス特殊飼料がコロナのため生産遅延し、納品が2022年度となったため
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