2018 Fiscal Year Research-status Report
パーキンソン病原因分子LRRK2の変異による腸管神経障害機構の解明
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18K15374
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
前川 達則 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (30647673)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腸管神経 / パーキンソン病 / 消化管運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度はLRRK2-KOマウスにおける腸管神経形態と腸管運動の解析を進めた。その結果、KOマウスの腸管神経では、腸管神経細胞の数、軸索束の太さ、グリア細胞の数などの明らかな形態異常は見られないことが明らかになった。また、腸管神経の主要なサブタイプである、Calretinin陽性神経、nNOS陽性神経の比率にも明らかな差がないことを確認した。近年、腸管神経細胞が早いサイクルで細胞死と神経新生を繰り返し、ダイナミックな入れ替わりサイクルによって正常機能を維持していることが明らかにされつつある(Kulkarni et al., 2017)。そこで、LRRK2-KOマウスにおけるSox2陽性細胞を解析した。Sox2は未分化細胞のマーカーとして、幹細胞の解析などに用いられる分子である。腸管神経系においては、グリア細胞で高く発現していることが知られているが、グリア細胞から分化した神経細胞にも発現していることが分かっている(Belkind-Gerson et al., 2017)。腸管神経細胞マーカーとして使われている抗Hu C/D抗体を用いた免疫染色の結果、KOマウスでは、Sox2とHuの両陽性細胞数が有意に増加していた。この結果は、LRRK2が腸管神経細胞の入れ替わりサイクルを制御することで、腸管神経系の機能をコントロールしている可能性を示唆している。 また、大腸運動の解析では、Spatiotemporal mapを用いたex vivo解析を試みた。従来の筋収縮を測定する方法とは異なり、Spatiotemporal mapによる腸管運動の解析では、腸管の連続的な分節運動や蠕動運動を解析することが可能となる。解析の結果、野生型マウスでは連続した蠕動運動を確認する事ができた一方で、KOマウスでは断片化した部分的な蠕動運動が有意に増加していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通りLRRK2-KOマウスを用いた実験では、腸管神経系の異常とそれに引き続く腸管運動の異常を確認する事ができた。その一方で、腸管神経新生異常のメカニズムについては詳細を明らかにできていない。また、異常な蠕動運動を引き起こしている原因病態についても未だ明らかにできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、パーキンソン病において最も頻度が高い変異である、G2019S変異型のLRRK2遺伝子をもつLRRK2ノックインマウスを用いて同様の解析を行う。また同時に、野生型マウス、LRRK2-KOマウス、LRRK2-G2019Sノックインマウスから作製した初代培養腸管神経細胞を用いて、各マウスに見られた異常の詳細な病態形成メカニズムの詳細を明らかにする。
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