2018 Fiscal Year Research-status Report
白血病の治療効果判定のための遺伝子検査法の開発とその臨床的意義の解析
Project/Area Number |
18K15390
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
水田 駿平 神戸大学, 保健学研究科, 研究員 (10782138)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | IL3/IGH / ゲノム解析 / 微小残存病変 |
Outline of Annual Research Achievements |
t(5;14) (q31;q32)IL3/IGHを伴う急性リンパ性白血病は、B細胞性の幼若細胞の出現と同時に著明な好酸球増加を伴うことが特徴的であるが、分子病態についてはほとんど解明されていなかった。我々は本病型をゲノム解析により診断し、微小残存病変(MRD)をgenomic PCR、マルチカラーフローサイトメトリー、およびFISH法を用いて多角的視点から評価した。また、生体内で増加する幼若B細胞は腫瘍性(白血病細胞)であり、好酸球は形態異常を伴うものの傍腫瘍性(反応性)であることをIL3/IGHの有無を始めとする体細胞変異の観点から明らかとした。本白血病が形成する病態のメカニズムについては、好酸球数とgenomic PCRに基づく白血病細胞量、IL3 mRNAの発現量の相関解析と腫瘍細胞の免疫形質解析より、IL3の過剰発現に基づく可能性を示した。すなわち、白血病細胞が産生する過剰量のIL3がパラクライン機構により誘導される好酸球増加と、白血病細胞に過剰発現されるIL3受容体(CD123)を介在したオートクライン機構に誘導される白血病細胞増加が本病型の本質であると考える。より詳細なメカニズムに関してはin vitroによる評価が不可欠ではある。しかし、このメカニズムを把握することにより、好酸球浸潤が形成する病巣のコントロールにはステロイド等を用いた対症療法に加えて白血病細胞の制圧が必要不可欠であることが示され、本病型の治療方針の決定に寄与するものと考えられる。以上の成果は小児血液腫瘍学の専門誌であるPediatric Blood & Cancerにて公表されている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幼若B細胞と好酸球をフローサイトメトリーによりソーティングし、なおかつ次世代シークエンサーを用いたエクソーム解析により、これらの細胞増加がそれぞれ腫瘍性、反応性であることを示せた。また、IL3/IGHにより形成される病態について概ね解析できた。以上の成果をPediatric Blood & Cancerにて発表した。また、検査学として本病型の同定方法を考えることも重要であり、2019年の日本検査血液学会で発表予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまではIL3/IGHを伴う急性リンパ性白血病の病態解析に焦点をあてた研究を実施してきた。治療後のMRDに関してはIL3/IGH genomic PCR、マルチカラーフローサイトメトリーを中心に解析してきたが、今後は治療後のMRDモニタリング法、診断補助について特異的な染色体転座を有する白血病では一般的に融合遺伝子のmRNAを定量することでMRDを評価する。IL3/IGHはgenomeレベルでは融合しているが、mRNAレベルではIL3の過剰発現が誘導されるのみであり、一般的な手法は採用できない。しかし、IL3 mRNAは本白血病細胞では過剰に発現する一方で、骨髄や末梢血中の正常血液細胞での発現レベルが非常に低いため、融合遺伝子ではないがMRDマーカーとしてある程度の特異性を有すると予想される。そこで、IL3/IGHを有する急性リンパ性白血病のMRDモニタリングマーカーとしてIL3 mRNAを新たに評価対象とし、genomic PCRと検出感度、特異性についての検討を実施する。本症例以外の急性リンパ性白血病や好酸球増多症、白血病寛解後の患者由来のmRNAに対してIL3の発現量を測定する。 また、本症例は確定診断にはダイレクトシークエンシングによるゲノムレベルでのIL3 promoterとIGH enhancerの結合の証明が必要であるが、ゲノムレベルでの遺伝子座の融合の検出は病院検査部では技術的に難易度が高い。そのためIL3/IGHを伴う急性リンパ性白血病の診断補助を目的とした新規スクリーニング法を確立できるか検討する。IL3 mRNA定量PCRはその候補であり、疾患特異性が示されれば本病型の迅速な診断に貢献できるものと考えられる。
|
Causes of Carryover |
少額端数の予算を無理に使用するのでなく次年度に有効利用することとした。
|
Research Products
(5 results)